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マニラKTV悲話 その㉕ 初体験2 [小説]

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作者と読者がイライラする中、食事後のジュリアと優二とは何も進展が無かった。
優二達は、テレビを付けて、日本の放送を見ている。
今は、インターネットを通じて、世界中何処ででも、日本のテレビ放送は見ることが出来るのだ。
大橋の友達に岡田と言うのが居て、彼に取り付けて貰ったのである。
岡田は、中国から直接機器を買い入れ、格安で比国内で取り付け販売をしていた。

サッカーには目がない優二は、これだけは非常に重宝している。
しかし、ずっとジュリアにハマり続けている彼は、テレビを見る機会など、殆ど無いと言っていい。
平日の午後の事とて、碌な番組も無かったが、他に見るものも無いので、単につけているだけだ。
言い忘れたが、優二は、今日は半日の休暇を取ってある。
ジュリア達は、店の方針で、基本的に、金、土、日は休めないからであった。

そうなると、どうしても優二の方で、休みを取らないと、休日デートは出来ないと言うことになる。
ジュリアは、日本の再放送ドラマを食い入って見ているように見えたが、実は気はそぞろであった。
彼女は、優二が求めて来るなら、身体を許す気でいたのである。
姉の、余りのジュリアに対する厳しさの反動が、ここに来て現れて来たのかもしれない。
(私は、もう子供ではないのだから・・・)

そう思い定めて来た割には、優二はソファの隣りに座っていながら、手も伸ばして来そうも無い。
こうなると、女の方が色には賢いものだ。
しきりに優二を誘うように、彼の手をいじりはじめたのである。
この信号に気が付かなければ、流石に優二は男では無かろう。
一気に、ジュリアを押し倒すと、キスをした。

そして、そのまま彼女を抱えると、ベッドルームに向けて突進する優二である。
それから、小一時間が過ぎた。
彼の体液は、確実に3cc程減っていた。
そう、とうとう彼は、ジュリアに思いを遂げたのである。
しかし、先程は吃驚した。

終わった瞬間、ジュリアがこう呟いたからである。
『バイバイ、アコのバージン・・・』
驚いた優二だが、下腹部をよく見ると、確かに彼女は出血していた。
インサートの時、結構抵抗が激しかったので、そうかなとも思ったのだが、本当であったのである。
ジュリアは、正真正銘のバージンであった。

勿論、優二は童貞ではない。
その筋の女性に、すっかりとお世話になったことが数回はある。
但し、彼は今、心から感動していた。
とうとう、彼女の身体と心を、自分のものにしたのだ。
優二は、男冥利に尽きると、自分で自分に感動していたのである。

しかしこの事が、後に優二の命をも脅かす事件に繋がろうとは、この時は思いも寄らなかった。
シャワーを終えた二人は、まだ余韻を楽しむかのように、再び抱き合ったのである。
夜の九時になり、カレンがジュリアに電話をしてきたので、彼女は仕方なく帰っていった。
ジュリアの帰った後は、流石に優二は虚しい。
もう少し、一緒に居たかった優二とジュリアであった。

こうなると、姉のカレンのことが、邪魔者に思えてならなくなるから不思議である。
(彼女さえ居なければ、例え明日の朝まででも、ジュリアと一緒に居ることが出来たのだ・・・)
優二は、そう思うと、カレンのことが恨めしくて仕方がなかった。
(どうすれば良いのかな・・・?)
彼は、そう思ったが、これと言って良いアイデアも浮かばなかった。

本当は、ジュリアと真剣に付き合いたいと言うのが筋かもしれない。
しかし、優二はいつもジュリアの口から、カレンの恐ろしさだけの話しか聞いていなかった。
(絶対に反対されるだろうな・・・)
そう思うと、カレンに直接言うのが怖くて仕方が無い。
全くもう、飛んでもない弱虫男を、主人公にしてしまった作者ではある・・・


続く・・・
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マニラKTV悲話 その㉔ 初体験 [小説]

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優二とジュリアは、ハリソンプラザで待ち合わせということになっている。
優二は徒歩で、ジュリアはジープで、初乗り運賃の距離であった。
ほぼ時間通りに現れたジュリアを見て、優二はどぎまぎしている。
思えば、前回の渡比時には、苦い思いをさせられた。
時間遅れの上、同伴を他の客に盗られるという、優二にとっては、大屈辱の日であった。

それから数回、デート(同伴)の度に、来るか来ないかと、やきもきさせられる優二であったのである。
こういうのを、トラウマというのであろうか?
傷ついた心の深さが、それを物語っていた。
さて、優二、ジュリアと手を繋ぐと、『何をする?』と、彼女に尋ねた。
『お腹が空いたわね、私、貴方の部屋で料理でも作ろうかしら・・・』

(か、家庭料理かあ・・・)
思わず、優二の心は踊った。
今までに彼女が殆どいなかった彼にとって、こんなことを言われたのは初めてである。
ということであれば、こんな所にグズグズしている場合ではない。
二人は、急いで買い物を済まそうと、スーパーマーケットに向かった。

『で、何を作ってくれるの?』
『アドボというフィリピン料理よ、食べたことがある?』
『いや、無いな、だって俺はいつも日本食ばかりだから・・・』
『だったら、今日が初めてね、分かったわ、じゃあ私が美味しいのを食べさせて上げる・・・』
『嬉しいな、有難う・・・』

優二は、素直に礼を言った。
現に、毎夕食はいつも『太虎』だし、昼間会社で頼む弁当も、日本食レストランからの仕出しである。
ジュリアとの同伴時も、食べるのはいつも、系列の日本食レストランであったのだ。
その方が、店に入る時間を、遅らす事が出来たからである。
二人は、買い物を済ますと、優二のコンドに戻った。

『わあ、広いわね・・・』
ジュリアは、部屋の中に入ると、第一声そう言い放った。
が、部屋の中の物といえば、大型テレビに、オーディオ機器などは充実していたが、台所用品に至
っては、相当に貧弱なものである。
彼は、元々自炊が苦手なのだ。

作れるものといえば、インスタントラーメンくらいしか無い。
後は、中型のフライパンが一つである。
セミ家具付きの部屋だったので、ソファやベッド冷蔵庫、エアコンの他は、自分で買い揃えなければ
ならなかったのだ。
ジュリアは、包丁やまな板は、前の住人が置いていったのが、辛うじて残っている。

必要な調味料は、先程買い揃えた。
ジュリアは、ラーメン鍋とフライパンでアドボを拵えることになる。
何とかこなして作ったが、肝心なものが無いことに二人は気が付いた。
ご飯が、無かったのである。
(ええい、一体何をやってんだ?)

作者は、もうイライラが募り、頭が爆発しそうである。
折角、サブタイトルに初体験と書いたのに、これでは、そこまで話が進まないではないか?
若しかしたら、フィリピン料理初体験と、作者はオチを考えたのであろうか?
何れにしても、姑息な小説を書く作者ではあった。
その時である。

優二が、作者に助け舟を出した。
そう言えば、インスタントのご飯を、荷物に入れていた筈だと思い出したと言うのだ。
これなら、お湯か電子レンジで温めれば、直ぐに食べられるではないか・・・
こうして、遅い昼食で有ったが、優二とジュリアは、仲良くご飯を食べることが出来たのであった。
さて、その後は・・・???


初体験2へ続く・・・(爆)
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マニラKTV悲話 その㉓ 恋愛・・・ [小説]

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作者の心配を他所(よそ)に、優二は、無事に出勤していた。
彼とて、やはり日本人である。
2日連続の遅刻が、どういう結果を招くかというくらい、分からない筈がない。
但し、酷い寝不足ではあった。
これは、仕方が無いであろう。

昨夜、コンドに帰ったのは、やはり夜中の12時を回っていた。
ジュリアのことで頭が一杯だったので、どうしても寝付きも悪い。
9時の出勤時間に間に合わせる為に、朝の6時には目を覚ましたが、多分睡眠時間は4時間位だ。
これからの優二は、いつも、睡眠不足との闘いになるのかも知れない。
35歳という若さゆえに、これしきのことは何でも無いのであろう。

優二は、その日の仕事を、ぼーとしながらも、大過なくこなす事が出来た。
それからの優二は、やはり毎晩のように、『太虎』とジュリアのもとに通うのが日課になっている。
コンド→職場→太虎→KTV→コンド、が、優二の日常であった。
その後、不思議なことに、何と作者の妨害もなく、初デートもこなした優二である。
初休日になった土曜日に、同伴を申し込んだのだ。

映画、ショッピング、夕食と、優二の思い通りに事が運んで行った。
特に、買い物では、ジュリアの好きな物は何でも買い与えた優二である。
これを、2,3週も繰り返したであろうか?
ジュリアの心境にも、やっと変化が現れた。
毎日のように通ってくる男を、憎かろう筈がない。

時に、彼女が他の客から指名を受けて中座した時など、優二がヘルプに着いた女の娘と仲良くして
居るのを見ると、嫉妬の念に駆られる事が有ったからだ。
そういう時にジュリアは、優二の席に戻った瞬間から機嫌が悪かった。
兎に角、優二に当たり散らすのである。
優二には、その理由がさっぱりと分からない。

それが、ジュリアの優二に対する愛情表現の一部だとしても、恋愛経験の少ない優二には、分かる
術(すべ)が無かったのである。
『なあに、それは縄張り(テリトリー)意識だよ、自分の物(彼氏)を盗られるとでも思い、威嚇している
だけでさあね・・・』
大橋にでも言わせると、こうなるのかも知れない。

が、ジュリアは違っていた。
姉のKTV3鉄則の教え、『惚れるな、触らすな、やらすな』 を、今は忘れようとしていたのである。
ジュリアも、まだまだ若い。
その為に、姉に従順であり続けた彼女だが、優二に恋をすることで、少し自立心が芽生えて来ている
のかも知れなかった。

それやこれやで、多少ジュリアのことを持て余す時もある優二だが、二人の仲は概ね良好だと言える。
が、何れこのジュリアの嫉妬が、異常なまでに増幅し、優二にとって、恐ろしい事件を引き起こすことに
なろうとは、この作者でさえ想像が付かなかった。
その話は暫く置き、話は一気に、ジュリアの月に一度の休日に飛ぶ・・・
この日、ジュリアは優二から、自分のコンドに来ないかと誘われていた。

しかし、この話は姉には言えない。
言えば、猛烈に反対するに決まっているからだ。
妹のジュリアに会いに、毎日店に通ってくる優二を、カレンはそんなに嫌ってもいない。
寧ろ、優しい独身の男ということで、好意を持っていた。
しかし、これが妹の彼氏になるということとは別である。

彼女は、あくまでも妹が心配なのである。
カレンも昔、今の日本人の彼氏が出来る前は、他の日本人に騙された経験がある。
彼女が、やはり19歳の時であった。
妊娠が発覚した時に、その男は逃げた・・・
だからこそ、妹のジュリアには、同じ道を歩んでは欲しく無かったのである。

その後、彼女は出産したが、その事実は、今の彼氏には知らされていない。
彼女達の田舎、パンガシナンという所で、両親の元に引き取られていたが、以前述べたように父親は
既に死亡しているため、母親と、学生である弟と妹とで、育てているようだ。
ジュリアは、いつもより早く起きると、姉に友達の所に行くと嘘をつき、家を出た。
勿論、優二の所に行くためである。


続く・・・
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ピーナと結婚するなら、道徳的人格を持ちましょう! [雑記帳]

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今迄は、婚姻要件具備証明書しか、必要なかったのですよね?

しかし、今後はそうは行かないようです。

新たな法案が、下院本会議で可決されたと聞きました。


その法案によると、婚約する男性が外国人の場合、

① 一定収入を確保出来る仕事に従事していることを示す、各国政府発行の証明書。

② 道徳的に立派な人格で有ることを示す証明書。


この2点の提出が、義務付けられるようです。

では、何故この法案が可決されたでしょう?

結婚後、過酷な労働を強いいられたり、売春を強要されたりとかいう事件が、背景に有るようです。


日本では、そう言う話をあまり聞きませんが、偽装結婚防止には少しはなるかもしれません。

元々、戸籍を売ろうとする男は、無収入の人間が多いです。

勿論、道徳的にも許されないでしょうなあ・・・(笑)


ということで皆さん、収入は兎も角、道徳的は少し厳しいですぞ。

しかし、誰が道徳的だと認定して、発行するのでしょうねえ?

まあ、直ぐに廃案にならなければ良いのですが・・・(爆)


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マニラKTV悲話 その㉒ 疑惑の氷解・・・ [小説]

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カレンは、よく喋る・・・
いや、喋りすぎるほどに喋った。
優二が、再会の記念だと言って、LD代わりに、シャンパンを1本入れてやったからである。
優二は、カレンからテキ-ラの話を聞き、テキーラに悪意を持つようになっていた。
その代わりと言っては何だが、シャンパンを入れることにしたのだ。

これでも、数杯分のLDにはなる。
ポイントの足りなかったこの姉妹には、非常に有難かった。
カレンは、喜びのあまり、野口の悪口を仕切りに言い始めた。
その方が、優二が喜ぶと思ったのだ。
さて、話を少し前に戻そう。

カレンの話によると、野口は偽装結婚のブローカーなのでそうである。
ジュリアには、それを目的に近付いた。
数回客のふりをして女の娘に近付き、その後、偽装結婚を持ち掛ける手口なのだそうだ。
野口はあの後、数回ジュリアに通ったらしい。
しかし、それに気付いたカレンがジュリアを防御した。

諦めた野口は、今度はジーナに手を染めてきたというわけだ。
真相は、全て飲み込めた。
まあ、誤解は完全に解けたのである。
優二が大喜びしたのは、間違いない。
『明日も又来るね。』

優二がそうジュリアに約束した頃には、既に深夜の3時を超えていた。
既に、閉店の時間である。
優二は、ジュリア達にお休みを告げ、飲み過ぎのまま、コンドに帰っていった。
次の日、と言っても既にその数時間後だが、優二は二日酔いのまま会社に行くことになる。
マニラの交通事情を知らない彼は、大幅に遅刻したのは言うまでも無い。

約、1時間近くも遅刻して、副支社長の吉本に、こっ酷く叱られた優二である。
『何故、コンドを会社の近くにしなかったんだ?」、とも彼に言われて困ってしまった。
小牧は、その叱られる優二を見て、ほくそ笑まざるを得ない。
出世のライバルが、何せ初日でこけたのである。
ざまあみろとは言わないが、優二は確実に出世の道から遠ざかるな、と位は思ったであろう。

この時の小牧は、何れ、自分もそれ以上の目に遭うことなどを、知る由もなかったのである。
それはさて置き、初日から散々の優二であったが、退社時から急に又元気が出てきた。
(今日は、コンドには戻らず、真っ直ぐに太虎へと向かおう・・・)
そう思った優二の目的は、無論、食事後のジュリアである。
優二は、大橋に会うと、開口一番、昨日の野口の話をした。

大橋の話によると、野口は、常連の客ではないという。
多分、2回位は見たことがあるそうだ。
『まあいいさ、今度この店に来たら、あんな奴出入り禁止にしてやる・・・』
吐き捨てるように、そう言った。
大橋は、偽装結婚などという姑息な手段を、最も嫌っていたのである。

そいつらのお陰で、まじめに結婚を考えている人間が、迷惑を蒙ると言うのであった。
それもその筈で、偽装結婚が蔓延ると、日本側で、防止策の為に結婚ビサなどの、書類審査が
厳しくなる。
つまり、偽装でないことを証明するために、時間と手間が余計に掛かるのだ。
大橋は、ブツブツ言いながら、奥へと入って行った。

さて優二は?
食べ終わると、早速U店に向かった。
携帯電話で連絡をしておいたお陰なのか、ジュリアは、優二を待ってくれていた。
二人の会話は、、それから長く続けられていく・・・
優二よ、明日は果たして起きられるのか?

続く・・・
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マニラKTV悲話 その㉑ 再会・・・ [小説]

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(何故、あの男がこんな所に・・・???)
優二は、流石に動揺を抑えきれなかった。
若しかしたら、連れてきている女の娘の中に、ジュリアも居るのかとも思ったのだ。
もう一度振り返ってみたが、幸い?なことに、彼女は居なかった。
が、一人だけ顔見知りが居る。

何と、あのU店のジーナではないか・・・
野口は、3人の女の娘を連れていたが、その中の一人は、やはりジーナであった。
(野口とジーナ・・・)
優二の頭の中では、この二人がどうしても結びつかない。
突然、優二とジーナの目が合った。

ジーナは、何故か謎の微笑を優二に送っている。
優二は、思わず目を逸らせてしまっていた。
野口を見て驚いたあまり、引きつっている顔を、ジーナに見られたくなかったのだ。
(しかし、これはチャンスではないか?)
この時間なら、同伴というわけでもあるまい。

(今なら、あのU店に行けば、邪魔者無しでジュリアに会えるかもしれない・・・)
明日はフィリピンでの仕事始めの日だというのに、優二は、そんなことを思い始めていた。
既に、時計の針は、午後11時30分を過ぎた所だ。
しかし、優二は野口の顔を見て、急に火が付いてしまったようである。
大橋への挨拶もそこそこに、彼は太虎を飛び出して行った。

そうやって、U店に、倒れこむようにして入って来た優二である。
店の者も、その優二の勢いには、驚いたに違いない。
日本の会社の経理部で、あの落ち着いた仕事振りの男とは、まるで別人のようであった。
ともあれ、店の者に案内されて、席に着いた優二である。
ショーアップよりも、ジュリアが居るかどうかを先に確かめた。

居ますということなので、優二は早速にリクエストをする。
暫くすると、ロングドレスで、髪に軽くウエーブの掛かったジュリアが席にやって来た。
『あら・・・』
優二を見ると、少し恥ずかしそうにして、彼の隣に座ったジュリアである。
『久しぶり・・・』

ジュリアは、そう片言の日本語で言った。
『元気だった?』
優二も、そう切り返すだけがやっとだ。
『私は元気です、この間はごめんね・・・』
ジュリアは、少ししおらしくそう言う。

『いいんだよ、もう・・・』
そう言った優二だが、実はあの時の理由が気になっていて仕方が無い。
暫く沈黙が続いたが、やはり優二の方から切り出した。
責めるのではなく、優しく問いかける優二に、ジュリアは、全て本当のことを話した。
それを聞いた優二は、ほっと一安心したが、まだまだ不安は抜けない。

その後の、野口のことが気に掛かっていたのだ。
彼は、何故ジーナと太虎にいたのであろう?
ジュリアとの、その後の関係は・・・?
矢継ぎ早に、そうジュリアを問い詰めると、彼女は、話すのを拒否してしまうかもしれない。
(ここは、慎重に聞き出さないと・・・)

そう考えた優二は、その席に姉のカレンを呼ぶことにした。
丁度月末で、締め日だったことも有り、カレンは喜んで優二の席に来た。
『あらあ、久しぶりですね、この間はジュリアがごめんね、 私がちゃんと怒って置いたから・・・』
流石にカレンは、ベテランである。
流暢な日本語で、優二にそう言った。


続く・・・



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マニラKTV悲話 その⑳ 新たな不安 [雑記帳]

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時計の針は、日曜日の午後10時を回っている。
結局、昨夜の飲み会は、午前様になった。
福支社長の吉本は、一次会で帰ったが、残った3人でKTVに行くことになったのだ。
一次会の飲み会は、コンドの近くにあ、る日本食レストランが立ち並ぶ一角で行われた。
その後、その近くにある、『珍獣の森』というKTVに、小牧が案内したのである。

日本を出発する前夜、あれ程優二のことを馬鹿にしていた小牧だが、彼とて例外ではなかった。
夜、退屈しのぎに、優二が嵌ったというKTVの見学に、行ってみることにしたのである。
(俺は、奴の二の舞いは御免だからな・・・)
そう思っていた小牧だが、その『珍獣の森』というKTVに入ってからその認識が覆(くつがえ)った。
(ほう、結構可愛い娘がいるなあ・・・)

そう思って、指名した娘がいけなかった。
小牧は、自然にその娘に嵌って行ったのである。
名前は、『アイリーン』
22歳で、独身ということだ。
小牧の案内でその店で飲んだ優二だが、彼は全然楽しめなかった。

ジュリアのことだけが、気に掛かっていたからである。
小牧は、皆にアイリーンを紹介し、リクエストをするように仲間に呼びかけた。
仕方がなく、優二は適当な娘を頼んだが、会話は少しもはかどらない。
好きな娘があってのKTVである。
どんな場末のKTVの娘でも、好きになれば通うものだ。

それはさて置き、話を元に戻そう。
気が付いてみれば、部屋の片付けをするのに、そんな時間になってしまっていた優二である。
優二は、遅い晩飯を食うべく、タクシーで『太虎』へと向かった。
岩崎に、突然に連れて来られた以前とは違い、優二はフィリピンについて、ネットで散々調べていた。
人間、何事にも興味を持てば、知識は広がるものだ。

フィリピン関連のブログも、沢山読んだ。
(大橋さんは元気かな・・・?)
彼も、ネット上では名物男である。
そう考える内に、優二は『太虎』に到着した。
『お、また来たの?』

大橋は、いつもの笑顔で優二を迎えてくれた。
店の中に入ると、優二は、両手では抱えきれないほどのお土産を、大橋に手渡す。
何しろ、以前の携帯電話盗難事件では、大橋には大変世話になったものだ。
『有難うよ!』
大橋は、それをそっけなく受け取りながらそう言った。

『ところで、南原さんは?』
優二は、それが気になっていたのである。
何しろ、ジュリアの真相究明を、彼に委託したのだから・・・
『奴なら、もう居ねえよ、何でも金が入ったから歯を治すとか言って、何処かの田舎に行ったよ。』
『そ、そうなんですか・・・?』

『何か、奴に用事があったの?』
『いえ、大したことはないんですが、少し頼み事をしたので・・・』
『ああ、奴に物を頼んだら駄目だよ、何もしやしないよ、あいつはいい加減だから・・・』
『ええ?、そうなんですか???』
『うん、頼んでお金を渡しても、何処かで飲んで終わりでさあね、まあ、無駄骨だったねえ・・・』

大橋は、取り付く島もないように、優二にそう言い放つ。
優二は、がっくりとしてそれを聞いていたが、それならそれで仕方が無い。
気を取り直して、飯を食うことにした。
『太虎定食は、有りますか?』
カウンターの上に掛かっている本日お勧めのメニューボードを見ながら、優二はそう大橋に聞いた。

優二の大好物の、ポテトサラダが付いてあると書いてあったので、それが食べたくなったのだ。
『うん、あるよ、おおい、太虎定食一丁!』
大橋が、大きな声で厨房に向けて声を掛けた。
そうして、次々と料理が運ばれてきたが、何故かポテトサラダがない。
代わりに、ひじきの煮付けが付いて来た。

『あのう~』
優二が、言い難そうに大橋にこう尋ねた。
『ポテトサラダは、付いていないのですか?』
大橋はそれを聞くと、立ち上がってこう宣言した。
『ポテトサラダは、明日になります!』

そう言い捨てると、優二が呆気(あっけ)に取られている内に、大橋は厨房の奥へと消えていった。
(意味が分からないが、まあ仕方が無い、ポテトサラダは明日にしよう・・・)
そう思い直し、ビールを1本頼んだ彼は、定食を平らげながらそれを飲んでいた。
その時である。
店の奥の席が、盛り上がっているのに気が付いた。

優二が振り返ってみると、何処かで見覚えのある男が、女の娘数人を連れて酒を飲んでいる。
『あ、あれは・・・』
(確か、ジュリアを連れて、お店に入って来た男だ。)
(何故、あいつがこんな所に・・・)
優二は、新たな胸騒ぎを、覚えるのであった・・・


続く・・・
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マニラKTV悲話 その⑲ コンド [小説]

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『な、何で、俺がぶ、部長と同じコンドなんだよ?』
優二は、今にも食って掛からんばかりの勢いで、小牧にそう詰め寄った。
『仕方が無いよ、部長命令だからさ・・・』
『部長命令・・・???』
優二には、何がなんだか分からない。

ここは、小牧に変わって、著者が説明しておこう。
副支社長の吉本と支社長の岩崎は、元々仲が良くない。
まあ、謹厳実直な吉本と、一見豪放磊落、実は結構だらしのない岩崎と、反りが合う筈がなかった。
事ある毎に半目までとは行かないが、お互いが、嫌っていたのは間違いない。
今度のコンド探しでも、そういう理由で、岩崎から小牧に指示があったらしい。

吉本と別のコンドを探すように言われた小牧は、岩崎に、実は優二も別のコンドを望んでいると、岩崎
に告げて仕舞った。
そこで、岩崎は、小牧にこう告げたのである。
『ああ、それは好都合じゃないか、じゃあ、福田くんと同じ住居でいいよ。』
と、つまり、そういう理由なのだ。

これには、優二は逆らえない。
部長が決定した事項なのである。
ぐうの音も出なくなった優二は、少し開き直って小牧にこう言った。
『分かったよ、分かったから、さあ、俺をそのコンドに案内してくれ・・・』
小牧に案内されたそのコンドは、パサイという地名に有った。

マラテ近辺が希望ということで有ったが、不自然に会社から遠すぎるし、安全面でも不安がある。
そこで小牧の選んだのが、ハリソンプラザというモールの近くにあるコンドであった。
だが、実際ここからマカティに通うには、渋滞は避けて通れない。
しかし、その事を、岩崎も優二も全く知らないのだ。
コンドを探した小牧でさえ、その事実を知らなかった。

日系ではない、地元の不動産屋に頼んだ結果がこれである。
それは、まだいい。
後々、分かることであった。
ともあれ二人は、引き続きチャーターしてあるバンに乗り込むと、そのコンドに向かったのである。
優二は、比較的広めの、ワンルームタイプの部屋に案内された。

吉本たちの部屋に比べても、格段と言っていいほど広い。
小牧の説明によると、家賃の違いだそうである。
まあ、土地の価格が違うのであろう。
その点、優二は一発で気に入ってしまった。
狭いのが、苦手な性質(たち)だったからである。

優二を送った後、小牧は自分のコンドへと帰っていった。
優二には、これからやることがゴマンと有ったのである。
既に送られてきていた荷物の整理、足りない物の買い出し、そうそう、携帯電話もこちら用のを買わ
ねばならない。
以前は、これが無かったばっかりに、苦労をした。

日本で使っていた携帯は、国際ローミングで使えはするが、やはり、通話料に問題が有り、こちらで、
買うのが一番使い良いはずだ。
それはさて置き、今日の夜は、マカティで吉本達との食事会が入っている。
まあ、軽い壮行会のようなものであろう。
それまでの短い間、優二は部屋の片付けに追われた。

が、中々思うようにははかどらない。
(この分じゃ、店に行けるのは月曜日の夜かもな・・・)
優二は、そう思えてきた。
明日は、朝から買い出しに追われるであろう。
(まあ、ここまで来てるんだ、焦ることもなかろう・・・)

そうは思いはしたものの、やはり、ジュリアに早く会いたい優二ではある。
しかし、会社の業務に支障が出るのだけは、何とか避けなければならない。
その為に、明日中に片付けを終えないといけないのは、優二にも分かっていた。
彼には、たったそれだけ、まだ理性が残っていたと言えよう。
優二の、眠れない夜は、まだまだ続くようである。


続く・・・





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マニラKTV悲話 その⑱ 再渡比・・・ [小説]

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『はあっ?』
話を聞いた小牧は、もう呆れてしまっている。
(この男は、海外赴任を良いことに、女のほうを優先しようとしている・・・)
いや、その通りであろう。
優二の頭の中には、最早、仕事という文字はなかった。

この千載一遇の機会を、利用するだけ利用してやろうと、考えていただけである。
そういう意味では、彼は完全に、死者に舞い戻って仕舞っていた。
理性を完璧に失っている彼を、小牧は冷静な頭で判断している。
(この男には、もう出世の見込みはないな・・・)
小牧にしてみれば、ライバルの脱落ほど嬉しいものはない。

彼は、そう思うことによって、自分の不満も慰めることが出来たのである。
『おお、任せておけ、とびっきりのいい所を探して置いてやる。』
彼が、二つ返事で請け負ったのは、言うまでも無かろう。
『小牧、有難う、有難う・・・』
と、礼を繰り返す優二を見ながら、心の中で笑っている小牧であった。

さて、12月1日は月曜日である。
優二達赴任組は、その前々日の土曜日が、マニラへの移動日となった。
部長の岩崎だけは、国内の引き継ぎが少し遅れるため、半月ほど赴任が遅れるらしい。
それまでの指揮は、営業部の副部長である吉本が、副支社長として取ることが決まっていた。
吉本は岩崎と違い、堅物で真面目一方の、仕事には厳しい人物である。

その吉本を先頭に、一行は成田空港を出発し、一路マニラに向けて飛び立った。
機中でも、優二の胸の内は、又もやジュリアで一杯になっている。
(真相を知るために、早く彼女に会いに行かなければ・・・)
最終日に会えなかっただけ、余計に酒精成分のようなものが強いのか、酔ったように、そう心の中で
繰り返す優二であった。

優二の会社は、何度も言うように食料品会社である。
自社で製造する製品もあれば、ワインや洋酒などの輸入販売も行っている。
まあ、多岐に渡って多くの食料品を扱っているのだが、フィリピンからは、主にバナナチップスとかのス
ナック類の仕入れもするらしい。
勿論、こちらでの自社製品販売にも力を入れていくつもりだ。

主力商品であるインスタント食品を始めとして、この所経済成長著しいこの国の市場に魅力を感じて
いるらしく、市場調査の上、日本から次々と出店しているコンビニなどと提携し、販売網を広げる戦略
だそうだ。
業務内容などは、経理の優二には一見関係なさそう思えるが、この先の彼の運命を決める上で重要
な事柄になるので、一応触れておく。。。

支社長は岩崎、副支社長は吉本、それに総務、経理、営業から、それぞれ一人づつ選出されていた。
つまり、日本人は全部で5人ということになる。
多いのか、少ないのかは分からない。
が、この下に、現地人のスタッフがそれぞれ付き、総勢20人余りの会社の体制になるらしい。
マニラ国際空港から、小牧がチャーターしたバンに乗り、一行は会社の有る所在地へと向かった。

支社は、マカティのARNAIZアベニュー(旧パサイロード)という場所にある。
空港からは、車で約30分位の距離だ。
が、多少混雑していたので、50分程掛かってしまった。
あるビルの一室が、彼らの職場となる。
一行は、事務所を見学した後に、早速に住居の確認となった。

小牧の説明によると、副支社長の吉本以下3人は、会社から歩いて5分程のコンドであるらしい。
日本食レストランや、グロセリーが近い、便利な場所だということだ。
『さあ小牧、それで俺の住処は何処なんだ?』
3人をそのコンドに見送った後、優二は小牧に向かってそう尋ねた。
『ああ、お前は岩崎部長と同じコンドだよ・・・』


続く・・・
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マニラKTV悲話 その⑰ 海外赴任 [小説]

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優二が、旅行代理店に相談に出かけようとした』その当日、優二たちの会社に、フィリピン支社が出来
るという話が、突然持ち上がって来た。
部長クラスでは、岩崎が移動との噂が有力になっている。
経理畑出身だが、彼が支社長として赴任して行くと言うのだ。
次期役員候補筆頭の彼としては、海外の支社長赴任はその手前の恒例人事に過ぎない。

(だから、岩崎部長が、自分は近々又フィリピンに行くかも知れないと、匂わせていたのか・・・)
優二は、その時初めて合点がいった。
岩崎は、予め社内にそういう動きが有ることに、気付いていたのである。
恐らく、常務あたりに、内示を受けていたものと思われた。
こういう場合、役員会で決定すると、矢のような人事が発表される。

赴任候補としては、他に、営業部や総務部からも係長クラスが行くし、経理部では当然英語の出来る
優二が筆頭であった。
その話が明るみに出たので、優二は当然のように、旅行代理店に相談に行くのを延期した。
事がはっきりするまでは、動くべきではないと判断をしたのだ。
それから、僅か3日後・・・

(信じられないな・・・)
もう、心が宙に浮くぐらい、優二の心は喜びで踊っていた。
予想通り岩崎が、経理担当人事で、優二を指名したのだ。
優二にとっては、望んでも望み切れない程の、夢が叶った格好である。
(これで、無理をしてまでも、フィリピンに行く必要が無くなった・・・)

単純に喜んだ優二だが、初渡比をする前なら、格下げに感じられるフィリピン赴任など、悲しいの一言
だったかも知れない。
どうせ海外支社に行くのなら、シンガポールやタイに、赴任したいと思っていた優二である。
が、今やフィリピンは、優二にとって、喉から手が出るほどに行きたい場所になっていた。
人間の喜怒哀楽など、ほんの運命の悪戯(いたずら)で、ころころと変わるものらしい。

さて、12月1日の赴任日まで、あとまだ3週間はあった。
そこで、総務部からは、優二と同期の小牧が、先行してフィリピン入りをすることになったのである。
支社が置かれるのは、ビジネス街のマカティというところに決まっていたが、小牧の役割は、駐在員の
住居を探したりすることである。
優二と違い、彼にとって、この人事ほど恨めしいものは無かった。

その話は後回しにして、残りの赴任組は、その間に国内のことを整理しないといけない。
海外赴任は、会社の規定で最低2年間と決められていた。
そうなると、優二は、今住んでいるアパートも、引き払わなければならないであろう。
不動産屋への連絡、電気やガスや水道、新聞等の後始末、不要品の整理及びにフィリピンに送る物
の準備等に、追われなければならない。

そういった忙しさの合間に、優二、は出発前夜の小牧と一緒に、外へ食事に出掛けた。
小牧は、妻帯者である。
二人目の子供が生まれたばかりで、会った途端に愚痴が始まった。
家族と一緒に赴任なら良いのだが、優二の会社では、3年以上の赴任で無い限り、家族を連れての
赴任は認められなかったのである。

『これほど、ツイてない人事もないよ・・・、折角二人目の子供が生まれたばかりだというのに・・・』
小牧の愚痴をしこたま聞かされた優二であったが、一方で、彼は喜びを隠しきれなかった。
終始笑顔で、小牧の不満を聞くものだから、小牧にはそれが面白くない。
『何かお前、本当に嬉しそうだな・・・』
そう言われた優二は、次のように言った。

『まあまあ、俺のことはいいじゃないか、しかしさあ、海外赴任は出世の前提だし、お前もこれを、チャ
ンスだと思えばいいんだよ。』
優二は、小牧を宥めるように言ったつもりだが、小牧は余計に反発してこう言った。
『お前は独身だからいいさ、俺には妻子がいる、しかも生まれたばかりの娘がもう可愛くてなあ・・・』
小牧は、もう泣かんばかりの落ち込みようである。

『お前の気持ちはよく分かるよ、でもこれも会社命令だ、仕方が無いさ・・・』
散々、あやすように、小牧を慰める優二だが、彼は如何にも無念げに、ビールを空けるばかりである。
納得しない小牧だったが、、優二は、彼にに自分の事情を説明しなくてはならない。
でないと、今日、小牧をここに呼び出した意味が無いのだ。
優二は、思い切ってこう小牧に切り出した。

『そう落ち込むなよ、ところでな、お前に折り入って頼みが有るんだが・・・』
優二は、全てを打ち明けた。
話の都合上、岩崎の秘密まで、小牧に漏らしてしまった優二である。
話を聞いて驚いている小牧に向かって、優二はさらにこう言った。
『俺の住居だがなあ、その店の近くにどうにかならないか?』


続く・・・



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