マニラKTV悲話 その㉕ 初体験2 [小説]
作者と読者がイライラする中、食事後のジュリアと優二とは何も進展が無かった。
優二達は、テレビを付けて、日本の放送を見ている。
今は、インターネットを通じて、世界中何処ででも、日本のテレビ放送は見ることが出来るのだ。
大橋の友達に岡田と言うのが居て、彼に取り付けて貰ったのである。
岡田は、中国から直接機器を買い入れ、格安で比国内で取り付け販売をしていた。
サッカーには目がない優二は、これだけは非常に重宝している。
しかし、ずっとジュリアにハマり続けている彼は、テレビを見る機会など、殆ど無いと言っていい。
平日の午後の事とて、碌な番組も無かったが、他に見るものも無いので、単につけているだけだ。
言い忘れたが、優二は、今日は半日の休暇を取ってある。
ジュリア達は、店の方針で、基本的に、金、土、日は休めないからであった。
そうなると、どうしても優二の方で、休みを取らないと、休日デートは出来ないと言うことになる。
ジュリアは、日本の再放送ドラマを食い入って見ているように見えたが、実は気はそぞろであった。
彼女は、優二が求めて来るなら、身体を許す気でいたのである。
姉の、余りのジュリアに対する厳しさの反動が、ここに来て現れて来たのかもしれない。
(私は、もう子供ではないのだから・・・)
そう思い定めて来た割には、優二はソファの隣りに座っていながら、手も伸ばして来そうも無い。
こうなると、女の方が色には賢いものだ。
しきりに優二を誘うように、彼の手をいじりはじめたのである。
この信号に気が付かなければ、流石に優二は男では無かろう。
一気に、ジュリアを押し倒すと、キスをした。
そして、そのまま彼女を抱えると、ベッドルームに向けて突進する優二である。
それから、小一時間が過ぎた。
彼の体液は、確実に3cc程減っていた。
そう、とうとう彼は、ジュリアに思いを遂げたのである。
しかし、先程は吃驚した。
終わった瞬間、ジュリアがこう呟いたからである。
『バイバイ、アコのバージン・・・』
驚いた優二だが、下腹部をよく見ると、確かに彼女は出血していた。
インサートの時、結構抵抗が激しかったので、そうかなとも思ったのだが、本当であったのである。
ジュリアは、正真正銘のバージンであった。
勿論、優二は童貞ではない。
その筋の女性に、すっかりとお世話になったことが数回はある。
但し、彼は今、心から感動していた。
とうとう、彼女の身体と心を、自分のものにしたのだ。
優二は、男冥利に尽きると、自分で自分に感動していたのである。
しかしこの事が、後に優二の命をも脅かす事件に繋がろうとは、この時は思いも寄らなかった。
シャワーを終えた二人は、まだ余韻を楽しむかのように、再び抱き合ったのである。
夜の九時になり、カレンがジュリアに電話をしてきたので、彼女は仕方なく帰っていった。
ジュリアの帰った後は、流石に優二は虚しい。
もう少し、一緒に居たかった優二とジュリアであった。
こうなると、姉のカレンのことが、邪魔者に思えてならなくなるから不思議である。
(彼女さえ居なければ、例え明日の朝まででも、ジュリアと一緒に居ることが出来たのだ・・・)
優二は、そう思うと、カレンのことが恨めしくて仕方がなかった。
(どうすれば良いのかな・・・?)
彼は、そう思ったが、これと言って良いアイデアも浮かばなかった。
本当は、ジュリアと真剣に付き合いたいと言うのが筋かもしれない。
しかし、優二はいつもジュリアの口から、カレンの恐ろしさだけの話しか聞いていなかった。
(絶対に反対されるだろうな・・・)
そう思うと、カレンに直接言うのが怖くて仕方が無い。
全くもう、飛んでもない弱虫男を、主人公にしてしまった作者ではある・・・
続く・・・