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マニラKTV悲話 その⑬ 待ちぼうけ・・・ [小説]

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デート(同伴)は決まったのに、一体、いつまでこの作者は引き伸ばすのであろうか?
姉や岩崎部長の妨害どころか、優二には、まだまだそれ以外の試練が待ち構えている。
ともあれ、話を前に進めよう。
デートの下見は終わったが、一旦ホテルに帰ると、再び岩崎部長に捕まる恐れがある。
優二はそう考えると、時間までは、モールに居座ることにした。

ジュリアとの約束は、午後の3時である。
(後、2時間近くもあるが、さて、何処で暇をつぶそうな? 4階にビンゴ会場が有ったので、ビンゴでも
やろうかな?)、などと考えた優二であったが、ふっとこう思った。
(おっといけない・・・)
うっかりとそういう場所に行くと、この作者のことだから、又とんでも無い事件に巻き込むに違いない。

『ちっ・・・』
作者の舌打ちなど聞こえないふりをした優二は、結局何もしないことにした。
広場に座るところを見つけたので、優二は2時間ほどそこで死んだ振りを決め込むことにした。
途中で、偽物屋だのコンド売りのお姉ちゃんが声を掛けて来る・・・
徹底的に無視をしたが、それ程までにして、デート迄の時間を、無事に迎えたかった優二である。

そして、午後3時・・・
ジュリアは、時間通りに・・・
来る筈が、なかった・・・
30分は有に過ぎたが、ジュリアはまだ現れない。
それもその筈、ジュリアはまだ深い眠りの中に居たのだ。

優二は、今日に備えて昨夜は店を早く出た。
これが、裏目に出ていたのである。
優二が帰ると、ジュリアは、指名が被っていた先程の客の席に戻った。
初客ではあったが、これが一遍にジュリアを気に入ってしまっていたのである。
彼は、姉のカレンまでを席に呼び、何とテキーラを1本注文した。

この店の女の娘にとって、テキーラ一本は、大きなポイントになる。
二人で割っても、一人頭12杯分のLDに相当するのだ。
新人のジュリアは兎も角、締めを間近に控えたカレンにとっては、渡りに船の客だったと言っていい。
客は閉店時間まで居座ったが、その間に、テキーラは綺麗さっぱりに無くなっていた。
ジュリアにとっては初テキーラであったが、案の定、相当に酔っ払ってしまったのである。

姉と二人でアパートに着いた時は、彼女はもう、足元も覚束ないほどに酩酊していた。
寝床でバタンキューのまま、午後3時になっても、目を覚まそうともしない。
その点は、姉のカレンも同じことであった。
しかし、流石に彼女はベテランである。
いつもは午後4時に起床するのであるが、この日もその時間には目が覚めた。

カレンは、目を覚まして時計を見たが、まだ横にジュリアが寝ているのを見て驚いた。
『ジュリア、早く起きなさい、もう4時だよ・・・』
カレンは、ジュリアの体を数回揺さぶらないと、彼女を起こすことが出来なかった。
それ程までに、ジュリアは深い眠りの中に居たのである。
ジュリアは、身を起こしたが、まだ体がいうことを効かないのか、又ベッドの中に戻りかけた。

『ジュリア、いい加減にしなさいよ、仕事でしょう?昨日のお客が待ってるよ!』
カレンにとって、同伴も勿論仕事の内だ。
優二にとってはデートかも知れないが、彼女等にとっては、ポイントを稼ぐ一つの手段に過ぎない。
カレンの叱責に、ジュリアはようやく起きる決心をした。
酒がまだ残っている身体をシャワーで洗い流し、ゆっくりと身だしなみを整えた。

ジュリアが、モールに到着した時は、既に午後5時半を回っていた。
待ち合わせ場所に行って優二を探したが、もう彼は既に居なかった。
この時、彼女には罪悪感はない。
フィリピンの若い世代では、男はいくら遅くなっても、女の娘を待たねばならないのだ。
そういう世界に育った彼女は、優二がいつまでも、待っているものばかりと考えて居たのである。


続く・・・
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