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マニラKTV悲話 その㉓ 恋愛・・・ [小説]

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作者の心配を他所(よそ)に、優二は、無事に出勤していた。
彼とて、やはり日本人である。
2日連続の遅刻が、どういう結果を招くかというくらい、分からない筈がない。
但し、酷い寝不足ではあった。
これは、仕方が無いであろう。

昨夜、コンドに帰ったのは、やはり夜中の12時を回っていた。
ジュリアのことで頭が一杯だったので、どうしても寝付きも悪い。
9時の出勤時間に間に合わせる為に、朝の6時には目を覚ましたが、多分睡眠時間は4時間位だ。
これからの優二は、いつも、睡眠不足との闘いになるのかも知れない。
35歳という若さゆえに、これしきのことは何でも無いのであろう。

優二は、その日の仕事を、ぼーとしながらも、大過なくこなす事が出来た。
それからの優二は、やはり毎晩のように、『太虎』とジュリアのもとに通うのが日課になっている。
コンド→職場→太虎→KTV→コンド、が、優二の日常であった。
その後、不思議なことに、何と作者の妨害もなく、初デートもこなした優二である。
初休日になった土曜日に、同伴を申し込んだのだ。

映画、ショッピング、夕食と、優二の思い通りに事が運んで行った。
特に、買い物では、ジュリアの好きな物は何でも買い与えた優二である。
これを、2,3週も繰り返したであろうか?
ジュリアの心境にも、やっと変化が現れた。
毎日のように通ってくる男を、憎かろう筈がない。

時に、彼女が他の客から指名を受けて中座した時など、優二がヘルプに着いた女の娘と仲良くして
居るのを見ると、嫉妬の念に駆られる事が有ったからだ。
そういう時にジュリアは、優二の席に戻った瞬間から機嫌が悪かった。
兎に角、優二に当たり散らすのである。
優二には、その理由がさっぱりと分からない。

それが、ジュリアの優二に対する愛情表現の一部だとしても、恋愛経験の少ない優二には、分かる
術(すべ)が無かったのである。
『なあに、それは縄張り(テリトリー)意識だよ、自分の物(彼氏)を盗られるとでも思い、威嚇している
だけでさあね・・・』
大橋にでも言わせると、こうなるのかも知れない。

が、ジュリアは違っていた。
姉のKTV3鉄則の教え、『惚れるな、触らすな、やらすな』 を、今は忘れようとしていたのである。
ジュリアも、まだまだ若い。
その為に、姉に従順であり続けた彼女だが、優二に恋をすることで、少し自立心が芽生えて来ている
のかも知れなかった。

それやこれやで、多少ジュリアのことを持て余す時もある優二だが、二人の仲は概ね良好だと言える。
が、何れこのジュリアの嫉妬が、異常なまでに増幅し、優二にとって、恐ろしい事件を引き起こすことに
なろうとは、この作者でさえ想像が付かなかった。
その話は暫く置き、話は一気に、ジュリアの月に一度の休日に飛ぶ・・・
この日、ジュリアは優二から、自分のコンドに来ないかと誘われていた。

しかし、この話は姉には言えない。
言えば、猛烈に反対するに決まっているからだ。
妹のジュリアに会いに、毎日店に通ってくる優二を、カレンはそんなに嫌ってもいない。
寧ろ、優しい独身の男ということで、好意を持っていた。
しかし、これが妹の彼氏になるということとは別である。

彼女は、あくまでも妹が心配なのである。
カレンも昔、今の日本人の彼氏が出来る前は、他の日本人に騙された経験がある。
彼女が、やはり19歳の時であった。
妊娠が発覚した時に、その男は逃げた・・・
だからこそ、妹のジュリアには、同じ道を歩んでは欲しく無かったのである。

その後、彼女は出産したが、その事実は、今の彼氏には知らされていない。
彼女達の田舎、パンガシナンという所で、両親の元に引き取られていたが、以前述べたように父親は
既に死亡しているため、母親と、学生である弟と妹とで、育てているようだ。
ジュリアは、いつもより早く起きると、姉に友達の所に行くと嘘をつき、家を出た。
勿論、優二の所に行くためである。


続く・・・
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