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マニラKTV悲話 その㉞ バタンガス2 [小説]

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(今日は、何も収穫が無かったな・・・)
優二は、ホテルのレストランで食事をしながらそう思ったが、流石に落胆せざるを得ない。
見かねたのか、前の席に座っていたジェシーが、慰めるようにしてこう言う。
『大丈夫よ優二さん、まだ明日があるから、明日は朝早くから市場に行きましょう、 若しか
したら、彼女が、買い物にでも来るかもしれないから・・・』

優二は、それを聞くと、少しだけ勇気が湧いてきた。
まだまだ、これくらいで諦めるわけにはいかないのだ。
ここでへこたれるようでは、ジュリアを取り戻すことは、一生掛かっても出来ないであろう。
(そうだ、今日はもう寝よう、そして、明日は早起きして、市場に行って張り込もう・・・)
優二は、心にそう誓った。

そう誓った優二だが、次の日の朝になっても、ジュリアを見つけることは出来なかった。
何しろ、市場そのものが広過ぎるのだ。
しかも、ジェシーは、ジュリアの写真だけが頼りだから、あまり当てにはならなかった。
折角、洗濯屋さんが、友達に頼んでここまで聞き出してくれたが、これが限度で有ったろう。
カレンに巧みに聞き出したのであろうが、詳しい住所まで聞くとなると、その理由が難しい。

如何にアバウトな国とはいえ、たったそれだけの情報では、やはり不可能と言えた。
市場の客は、午前中早い時間と、夕方前が混雑の時間である。
昼前になっても、やはりジュリアが顔を見せることは無かった。
いや、本当はここに来たのかも知れないが、出会う機会が無かっただけかも知れない。
兎に角、腹も減ってきた。

優二は、市場内である食堂で飯を食おうとジェシーに相談した。
が、彼はあからさまにそれに反対した。
そんな所で食べれば、慣れない優二は、必ず腹を壊すというのである。
数多くの日本人観光客を相手にしてきたジェシーだけに、この言葉に優二は逆らえない。
ジェシーの提案で、午後から再び市場に戻ることにして、昼飯はモールで摂ることにした。

そのモールで、日本食もどきのレストランに行った二人だが、注文した料理の、あまりの不
味さに、驚いた優二達である。
これでは、市場の中の食堂のほうが、遥かにましかも知れない。
そう考えただけで、優二は、本当にお腹が痛くなってきた。
精神的なものか、食べたものが本当に当たったのか、急に腹が下って来たのだ。

優二は、ジェシーに断り、トイレに行くことにした。
トイレだが、右側のドアが男性用で、左側のドアが女性用であった。
が、男性用の大便室が、全部塞がっている。
4つある中で、3つまでが修理中となっており、1つしか、利用が可能ではなかったのだ。
そこに、既に5人ほどが列んでいる。

優二は、今迄に経験した事のない位の腹の痛みに、マジで気が狂いそうになった。
腸も、ごろごろと大きな音を立てて鳴っている。
(は、早く、違うトイレを探さないと・・・)
気は焦ったものの、果たして違うトイレに辿り着くまでに、この腹が持つのであろうか?
優二は、冷や汗をたらたら流しながら、そこを出ると、違うトイレを探しに出掛けた。

やっとの思いで、違うトイレを見付けた丁度その時、優二は、偶然そこの女性用トイレに入
って行くジュリアを見掛けたのである。
『ジュ、ジュリア~』
彼は、必死で声を振り絞って、声を掛けた、その時で有った。
ブリブリブリ~~~

優二に、肉体的崩壊と精神的崩壊が、一度に訪れたのである。
そこに、崩れるようにして倒れる優二。
排泄はしたものの、更に激しい腹痛が、優二を襲っていた。
これは、只の食中毒では無いようだ。
周りから、わらわら人が寄ってきたが、その中で、優二は気を失い掛けていたのである。


続く・・・


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