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マニラKTV悲話 その㉛ 失意の日々・・・ [小説]

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それからの優二は、流石に失意の日々を送るほかは無かった。
ジュリアに電話しても、電話番号でも変えられたのか、連絡が一切付かない。
それでも、優二には、店に行く勇気も持てなかった。
何よりも、姉のカレンが怖い。
しかも、彼女からは、二度とジュリアの前に顔を見せるなと、強く念を押されていた。

悶々としながらも、優二は仕事を続けなくてはならない。
そういう折、間の悪いことに、部長の岩崎までが、とうとう赴任してきてしまった。
当然、優二と同じコンドである。
岩崎は、優二の憂鬱などはお構いなしに、あれこれと、彼に自分の身の回りの世話までさせた。
まあ、言葉のあまり出来ない岩崎は、優二を便利に使いたかったのだ。

(とほほ、まるで地獄だよ・・・)
と、優二はそう嘆いたが、
(これも自業自得なのだ・・・)
そう思って、諦めるしか無かった。
(しかし、あれから、ジュリアはどうしたのであろう・・・)

病院を3日程で退院したのは、病院に行っから確認できた。
何せ、支払いをしたのは優二だから、病院側も簡単に教えて呉れたのだ。
但し、その後の事が分からない。
優二は、思い切って、『太虎』の大橋にでも相談しようと考えた。
善は急げで、思い立ったその日の仕事明けに、彼は『太虎』へと向かった。

『お、随分久しぶりだな、元気にしてたの?』
優二が店に入った瞬間、大橋がそれを見て直ぐに彼に尋ねる。
『はい、お陰様で・・・』
『彼女は元気なの?、最近連れてこないな・・・』
『・・・・・・・』

優二は以前、同伴の3回に一度は、ジュリアを『太虎』に連れてきていた。
U店の系列店の、『大和橋亭』ばかりでは、食い物に、飽きてしまっていたからである。
『返事がないところを見ると、別れたのか?』
大橋は、事情を全く知らないものだから、容赦なくそう問う。
『い、いいえ、あ、あのう実は・・・』

優二は、恥ずかしながら、大橋に、何もかも打ち明けた。
しかし、大橋の意見は、優二が思ったより、ずっと冷たかった。
『そりゃあな、バレたのはあんたが悪い、でもな、女なんか星の数だけ腐るほど居るんだよ、まあ、
諦めるこった、又新しいのを作ればいいんだよ。』
優二が、呆れるほど、素っ気ない大橋の言葉である。

大橋は、純情一途の優二と違い、幾度ともなくピーナとの修羅場をくぐった、強者(つわもの)だ。
彼には彼なりの、人生観や女性観が有る
ひよっこである優二の悩み話など、大橋にとっては、退屈な極(きわ)みで有ったろう。
あっさりと躱された優二は、話を南原の消息に変えてみた。
南原の都合さえ良ければ、ジュリアの消息を探りに、U店に行って貰おうかと考えたのである。

『ああ、あいつならもう居ねえよ、ここを、もう出入り禁止にしたから・・・』
この返事も、優二には意外だった。
理由を聞いてみたが、大橋は、笑うばかりで取り合わない。
優二は、取り付く島もないという格好で、『太虎』を出るしか無かった。
そうして、U店の前を通り掛かったが、カレンに出会うのが怖くて、彼は急ぎ足でそこを通り過ぎる。

その後、ビラ撒きがしつこく優二に付き纏うのを振り払い、彼は、ようやくタクシーに乗った。
『太虎』の前で乗れば良かったのであろうが、やはり、本当はU店の前も通りたかったのだ。
カレンを恐れているにしろ、若しかしたら、ジュリアにも会えるかもしれないという期待が、優二の心
の底に、無かったとは言えない。
しかし、その期待は虚しかったのである。


続く。。。
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