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マニラKTV悲話 その㉝ バタンガス [小説]

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ジュリアの親戚の家というのは、死んだ父親の姉の家であるらしい。
それは、バタンガスという港と市場の中間近くにあると言うことだ。
元々、彼女達の田舎はパンガシナンであった。
そこまで帰るには、時間も金も掛かるし、何よりも作者が困る。
大体、そこに行ったこともない。

『知らぬは書けぬ』、ということで、無理やり、設定を親戚の家にした作者である。
これなら、何度も行っているから書けるであろう。
という作者の勝手な都合で、優二は、洗濯屋さんのアドバイスも有り、ジュリアを探しにバタンガス
に向かうことになった。
彼は、岩崎に頼み込み、たった2日間だけの休暇を貰った。

これを吉本なんぞに頼むと、『あほか?』と一蹴されるに違いない。
着任早々の休暇など、常識知らずと言われても仕方が無かろう。
その点、岩崎は寛容である。
まあ、今後も優二を便利に使いたいという思惑も有り、恩を売っておくのは、悪く無いと考えたのかも
知れない。

休暇の件は、彼が快諾した。
優二は、洗濯屋さんに頼み込み、レンタカーを探して貰った。
こういうことは、会社の小牧に頼めば良かったのかも知れないが、彼に何もかも知られてしまうのは、
如何にもまずい。
そういう訳で、優二は、洗濯屋さんが手配してくれたレンタカーに乗り、一路バタンガスへと向かった。

バタンガスの港へは、マニラから2時間弱である。
昔は、3時間以上は掛かったが、高速道路が出来たので、今では大幅に短縮された。
洗濯屋さんから聞いた住所は、実はそんなに詳しくはない。
港と市場に近いというだけで、番地や通りの名前などは聞けていない。
それだけで、ジュリアを探しに行くというのは、雲をつかむような話であろう。

しかし、優二は、座して待つというわけにはいかなかった。
やはり、彼にとって一番大切なのは、ジュリアなのである。
彼女を、このまま失いたくない思いで、カレンから近づくなと言う約束までを、反故にしようとしている
優二であった。
(何が何でも、彼女を自分の手に取り戻す!)

彼の決心は、ここに来て、ようやく固まったようだ。
これも、洗濯屋さんの、心強い言葉のお陰で有る。
優二は、心勇んで、バタンガスに、向かっていた。
洗濯屋さんが手配してくれたレンタカーの運転手は、ジェシーと言う。
ジェシーは、以前日系のレンタカー会社に勤務していたらしく、多少の日本語が理解が出来た。

今は、独立して、自分の車をローンで買い、自分でお客を取っている、いわばフリーの白タク屋だ。
洗濯屋さんとは、以前の会社の時からの付き合いらしく、相当信頼されているらしい。
『この男は、中々機転が利くし、役に立つと思うよ。』
優二が、そのレンタカーに乗り込む前に、洗濯屋さんがそう言った。
そういう、洗濯屋さんイチ押しのジェシーであったから、優二には心強く感じられた。

そうしてたジェシーと優二であったが、バタンガス港に着くと、その近所から当たって見ることにした。
が、これは、無謀であろう。
マニラとは違い、人口は少ないものの、それでも、相当数の人間がここで暮らしているのだ。
半日をほぼ棒に振った彼らは、途方に暮れていた。
仕方なく、暗くなってきたことも有り、彼らは、港近くのホテルに宿をとることにしたのである。


続く・・・
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