SSブログ

マニラKTV悲話 その㉔ 初体験 [小説]

hatuta01.jpg

優二とジュリアは、ハリソンプラザで待ち合わせということになっている。
優二は徒歩で、ジュリアはジープで、初乗り運賃の距離であった。
ほぼ時間通りに現れたジュリアを見て、優二はどぎまぎしている。
思えば、前回の渡比時には、苦い思いをさせられた。
時間遅れの上、同伴を他の客に盗られるという、優二にとっては、大屈辱の日であった。

それから数回、デート(同伴)の度に、来るか来ないかと、やきもきさせられる優二であったのである。
こういうのを、トラウマというのであろうか?
傷ついた心の深さが、それを物語っていた。
さて、優二、ジュリアと手を繋ぐと、『何をする?』と、彼女に尋ねた。
『お腹が空いたわね、私、貴方の部屋で料理でも作ろうかしら・・・』

(か、家庭料理かあ・・・)
思わず、優二の心は踊った。
今までに彼女が殆どいなかった彼にとって、こんなことを言われたのは初めてである。
ということであれば、こんな所にグズグズしている場合ではない。
二人は、急いで買い物を済まそうと、スーパーマーケットに向かった。

『で、何を作ってくれるの?』
『アドボというフィリピン料理よ、食べたことがある?』
『いや、無いな、だって俺はいつも日本食ばかりだから・・・』
『だったら、今日が初めてね、分かったわ、じゃあ私が美味しいのを食べさせて上げる・・・』
『嬉しいな、有難う・・・』

優二は、素直に礼を言った。
現に、毎夕食はいつも『太虎』だし、昼間会社で頼む弁当も、日本食レストランからの仕出しである。
ジュリアとの同伴時も、食べるのはいつも、系列の日本食レストランであったのだ。
その方が、店に入る時間を、遅らす事が出来たからである。
二人は、買い物を済ますと、優二のコンドに戻った。

『わあ、広いわね・・・』
ジュリアは、部屋の中に入ると、第一声そう言い放った。
が、部屋の中の物といえば、大型テレビに、オーディオ機器などは充実していたが、台所用品に至
っては、相当に貧弱なものである。
彼は、元々自炊が苦手なのだ。

作れるものといえば、インスタントラーメンくらいしか無い。
後は、中型のフライパンが一つである。
セミ家具付きの部屋だったので、ソファやベッド冷蔵庫、エアコンの他は、自分で買い揃えなければ
ならなかったのだ。
ジュリアは、包丁やまな板は、前の住人が置いていったのが、辛うじて残っている。

必要な調味料は、先程買い揃えた。
ジュリアは、ラーメン鍋とフライパンでアドボを拵えることになる。
何とかこなして作ったが、肝心なものが無いことに二人は気が付いた。
ご飯が、無かったのである。
(ええい、一体何をやってんだ?)

作者は、もうイライラが募り、頭が爆発しそうである。
折角、サブタイトルに初体験と書いたのに、これでは、そこまで話が進まないではないか?
若しかしたら、フィリピン料理初体験と、作者はオチを考えたのであろうか?
何れにしても、姑息な小説を書く作者ではあった。
その時である。

優二が、作者に助け舟を出した。
そう言えば、インスタントのご飯を、荷物に入れていた筈だと思い出したと言うのだ。
これなら、お湯か電子レンジで温めれば、直ぐに食べられるではないか・・・
こうして、遅い昼食で有ったが、優二とジュリアは、仲良くご飯を食べることが出来たのであった。
さて、その後は・・・???


初体験2へ続く・・・(爆)
nice!(0)  コメント(22) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。