マニラKTV悲話 その㉑ 再会・・・ [小説]
(何故、あの男がこんな所に・・・???)
優二は、流石に動揺を抑えきれなかった。
若しかしたら、連れてきている女の娘の中に、ジュリアも居るのかとも思ったのだ。
もう一度振り返ってみたが、幸い?なことに、彼女は居なかった。
が、一人だけ顔見知りが居る。
何と、あのU店のジーナではないか・・・
野口は、3人の女の娘を連れていたが、その中の一人は、やはりジーナであった。
(野口とジーナ・・・)
優二の頭の中では、この二人がどうしても結びつかない。
突然、優二とジーナの目が合った。
ジーナは、何故か謎の微笑を優二に送っている。
優二は、思わず目を逸らせてしまっていた。
野口を見て驚いたあまり、引きつっている顔を、ジーナに見られたくなかったのだ。
(しかし、これはチャンスではないか?)
この時間なら、同伴というわけでもあるまい。
(今なら、あのU店に行けば、邪魔者無しでジュリアに会えるかもしれない・・・)
明日はフィリピンでの仕事始めの日だというのに、優二は、そんなことを思い始めていた。
既に、時計の針は、午後11時30分を過ぎた所だ。
しかし、優二は野口の顔を見て、急に火が付いてしまったようである。
大橋への挨拶もそこそこに、彼は太虎を飛び出して行った。
そうやって、U店に、倒れこむようにして入って来た優二である。
店の者も、その優二の勢いには、驚いたに違いない。
日本の会社の経理部で、あの落ち着いた仕事振りの男とは、まるで別人のようであった。
ともあれ、店の者に案内されて、席に着いた優二である。
ショーアップよりも、ジュリアが居るかどうかを先に確かめた。
居ますということなので、優二は早速にリクエストをする。
暫くすると、ロングドレスで、髪に軽くウエーブの掛かったジュリアが席にやって来た。
『あら・・・』
優二を見ると、少し恥ずかしそうにして、彼の隣に座ったジュリアである。
『久しぶり・・・』
ジュリアは、そう片言の日本語で言った。
『元気だった?』
優二も、そう切り返すだけがやっとだ。
『私は元気です、この間はごめんね・・・』
ジュリアは、少ししおらしくそう言う。
『いいんだよ、もう・・・』
そう言った優二だが、実はあの時の理由が気になっていて仕方が無い。
暫く沈黙が続いたが、やはり優二の方から切り出した。
責めるのではなく、優しく問いかける優二に、ジュリアは、全て本当のことを話した。
それを聞いた優二は、ほっと一安心したが、まだまだ不安は抜けない。
その後の、野口のことが気に掛かっていたのだ。
彼は、何故ジーナと太虎にいたのであろう?
ジュリアとの、その後の関係は・・・?
矢継ぎ早に、そうジュリアを問い詰めると、彼女は、話すのを拒否してしまうかもしれない。
(ここは、慎重に聞き出さないと・・・)
そう考えた優二は、その席に姉のカレンを呼ぶことにした。
丁度月末で、締め日だったことも有り、カレンは喜んで優二の席に来た。
『あらあ、久しぶりですね、この間はジュリアがごめんね、 私がちゃんと怒って置いたから・・・』
流石にカレンは、ベテランである。
流暢な日本語で、優二にそう言った。
続く・・・