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マニラKTV悲話 その㊷ 決意! [小説]

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アイリーンの気持ちは、優二にはよく分かった。
が、しかし、これを単に小牧に伝えるだけなら、ここに来た意味が無い。
何とか、少しでも解決策を見い出して置かないと、帰るに帰れない彼なのだ。
彼女の言うことは、信じるに足るものだと、優二は確信している。
子供も、九分九厘小牧のものだとしか思えない。

だが、小牧は、それを認める気はないのだ。
認めてしまえば、責任を取らねばならない。
彼は、目的のためなら、手段を選ばぬような男である。
何せ、支社長である岩崎まで、脅迫するような奴なのだ。
(どう、責任を取らせれば良いのか・・・?)

優二は、思い悩んだ。
元はと言えば、優二はこの件に、関わるべき話ではなかった。
自分のうっかりミスで、岩崎のことを、小牧に口走ってしまったが為に、引き起こった事件である。
こればかりは、自分で尻を拭うしか、他に道はない。
小牧は、自己責任を、完全に放棄しようとしている。

優二には、これが許せなかった。
妻子が日本に居ると言っても、外国に来て子供を勝手に作ってしまい、そこから逃げ出そうとする
など、男の風上にも置けない奴だと、憤慨していたのである。
優二は、考えあぐねた結果、これだけをアイリーンに告げて、店を後にした。
『小牧とのことは、俺に全てを任せて呉れないか?、決して悪いようにはしないから・・・』

ここで、小牧と二人だけで会わす事態だけは、避けようと考えたのだ。
最も、小牧の方で、会うのを拒否する可能性の方が大だった。
(一筋縄では、いかない奴だからな・・・)
優二は、自分のコンドへ帰る道々、色んな手立てを考えた挙句、一つの決心をした。
この際、小牧と全面対決をすることである。

元々、岩崎に責任を取って、会社を辞めようと考えた優二だ。
小牧と刺し違えになって、会社をやめる結果になっても、悔いは無いではないか?
今の自分には、ジュリアが居てくれる。
例え会社を辞めても、自分の貯金で当分は食えるはずだ。
若しかしたら、こちらで新たな仕事を探せるかもしれない。

そう言えば、以前、『太虎』の大橋に聞いたことが有る。
こちらには、駐在でなくても、現地採用の道があると・・・
優二は、それらを全てプラス材料に数え、小牧との決戦に望んでやると、心に誓った。
コンドに帰ったのは、午後の10時過ぎである。
部屋に入る早々、ジュリアは喜び、優二に飛びついて来た。

彼は、至福の喜びに包まれる・・・
(こういうことが、これからも毎日続くのだ・・・)
自分のやったことに対するのけじめと、今後もこの幸せを守るためにも、明日は小牧との決戦だ
と、優二は、再度心に誓ったのである。
さて、その夜も更け、次の日の朝が来た。

優二は、気合を入れて出勤している。
(今日こそは、決着を着けてやるからな・・・)
優二は、やる気満々である。
小牧の顔を見ると、直ぐに彼のもとに行った。
『昼休みに、もう一度話をしないか?』

『ちぇ、面倒くさいやつだな、まだ俺の話に関わりたいのか?、どうなっても知らないぞ!』
相変わらず、小牧は強気である。
さて、その昼休み、二人は、『スモール東京』ではなく、近所にある、ローカルレストランに居た。
『小牧よ、お前が態度を改めないなら、俺にも考えがあるぞ・・・』
会った瞬間から、優二が、のっけからそう宣言した。


続く・・・
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