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マニラKTV悲話 その㊱ マニラへ・・・ [小説]

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優二の病名は、どうやら、急性腸炎で有ったらしい。
その日の夜だけ、優二は病院へ泊まった。
ジュリアは、夜遅くまで優二の側にいて看病をしたが、夜更けに、叔母の元へと帰っていった。
明日の朝、彼女は優二と一緒に、マニラに戻るつもりだ。
優二は、岩崎に病気の旨を告げ、休暇を、明日迄延長して貰った。

電話の向こうで、岩崎は嫌な顔をしたが、急病だと言うのだから仕方が無い。
『特別に許可してやるよ』、と、せいぜい、恩着せがましく言ったものだ。
優二は、ジュリアの姉であるカレンに、彼女とのことを許して貰う決心をしていた。
そのことをジュリアに伝えると、当然のように彼女も喜んだ。
叔母の家に帰ったら、支度を済ませ、翌日の朝には、この病院に戻って来る予定である。

優二は、殆ど喜びのあまり、一睡もできない。
腹の痛みも、処置が良かったのか、今では、全くと言って良いほど無くなっていた。
だけど、思いがけなく、ジュリアに再会出来たし、よりも戻せたのは、この腹痛のお陰である。
病気に感謝する馬鹿も居ないであろうが、優二は、この病気に本気で感謝をしていた。
そして、誰よりもジェシーには、何度礼を言ったかわからない。

実際、彼がモールで昼食を食べようと言って呉れなければ、ジュリアと再会は出来なかったろう。
そういう意味では、優二にとって、彼は救世主(メシア)であったに違いない。
さて、翌日になった。
ジュリアは、約束の時間より、1時間も早く病院に来た。
待たされることは沢山あったが、ジュリアの方が先に来たことは一度もない。

まあ、彼女も、優二に会えたことが、余程嬉しかったと見える。
退院の支度を、いそいそとやっていた。
やがて、ジェシーが迎えに来て、病院の支払いを済ませた優二達一行は、マニラへ向けて、帰
途に着くこととなる。
(今日は、沢山やることがあるぞ・・・)

それは、そうであろう。
先ず、何をさて置いても、洗濯屋さんに礼に行かなければならない。
彼のアドバイスがあってこその、今日である。
その後は、カレンとの話し合いだ。
これが、一番の難関である。

(彼女が、どうでるだろうか?)
そう優二は考えると、身震いが出て仕方が無い。
(若しかしたら、刺されるかもな・・・)
どうしても、そこまで考えてしまう。
そういう怖い話は、大橋からも沢山聞いていた。

(ええい、その時はその時だ・・・)
優二は、開き直らざるをえない。
『開き直る事に慣れないと、比国では行きていけないよ。』
時々、愚痴るくせに、大橋はこうも優二に言っていた。
優二が、色々なことを考える内に、ジェシーの車は、無事に洗濯屋さんの店の前に着いた。

ジェシーが、電話で連絡を取っていたので、洗濯屋さんは店に居た。
自分のコンドから、わざわざ駆けつけて呉れたらしい。
洗濯屋さんは、優二からの報告を聞き、自分のことのように、喜んだ。
右手の指で、小さな布をブンブン振り回しながら、踊るようにしながら、彼はこう言う。
『良かった良かったねえ・・・、これで彼女と同居でもしたら、洗濯物はうちで頼むよ。』

『ははは、分かりました、是非そうさせて下さい、所で、今指で振り回しているのは何ですか?』
『ああ、これは客のパンティさぁ、さっきここに来たんだけどね、それが凄いべっぴんだったんだ
よ、あそこの匂いも抜群だな、あっ、良かったら君も匂ってみるかい?』
『い、いいえ、え、遠慮しておきます。』
『おっほっほっほ、遠慮深いんだねえ、俺は、これだから洗濯屋が止められないんだよ・・・』

『・・・・・・・』
洗濯屋さんは、自分の趣味を隠そうともしなかった。
一部始終を見ていたジュリアで有ったが、恩は兎も角、ここに、自分の下着は死んでも出すまい
と、心に誓っていたのは言うまでも無い。
暫くしてから二人は、洗濯屋さんとジェシーに別れを告げ、コンドへと歩いて帰ることにした。


続く・・・
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