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マニラKTV悲話 その㊾ 大混乱! [小説]

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ジュリアは、優二達の宴会が余りにも遅いので、その居酒屋まで様子を見に行っていた。。
その矢先の事である。
居酒屋の入り口に立った瞬間、奥の座敷の喧騒が目に入った。
そこで彼女の見たものは、前述の通りである。
彼女は、つかつかつかと二人の方に近付くと、優二が驚く暇もなく、ミッシェルの頬を引っ叩いた。

そこから先は、大乱闘である。
事情を知らない会社の仲間は、ジュリアを暴漢と見たのは言うまでも無い。
ミッシエルを助けようと、先ずは男性社員がジュリアに襲い掛かる。
ジュリアは、大勢を相手にしなければならなかった。
それを、必死で食い止めようとする優二・・・

居酒屋の中は、もう筆舌に耐え難い程の大混乱になった。
豪放磊落な岩崎も、謹直な吉本も、既に目が点になっている。
慌てふためいていた優二は、隙を見てジュリアの手を引っ張ると、彼女を引きずるようにして、店外
へと連れ出した。
それを、必死になって抵抗するジュリア・・・

優二は、懇親の力を振り絞って、ジュリアを抱え込むと、タクシーを捕まえ、無理矢理に彼女を後
部座席に押し込んだ。
タクシーの中でも、大暴れに暴れるジュリアである。
一番迷惑を蒙ったのは、タクシーの運転手であろう。
ジュリアが暴れるたびに、運転手の頭や肩に、ジュリアの手や足が当たった。

『ボス、ごめんよ、料金は2倍払うから・・・』
優二は、そう言うしか無い。
その内に、コンドに着いた。
今度は、そこが戦場だ。
ジュリアは、そこでも優二をなじりながら、暴れ続けた。

彼女が落ち着いたのは、夜中になってからである。
優二は、やっとの思いで、彼女に事の成り行きを、理解して貰えたようだ。
しかし、これからが問題である。
この不始末を、どう拭っていくべきか・・・
幹事の身でありながら、宴会場を、無断で立ち去ってしまった。

しかも、あの大混乱の最中にである。
(これで、ジュリアの事を皆に知られてしまったな・・・)
そう考えただけで、優二の気持ちは暗くなるばかりだ。
明日は、隔日土曜日で、休みである。
優二は、この時点でクビを覚悟した。

朝になるのを待ち、彼は岩崎の部屋に行く・・・
岩崎は、部屋に居た。
優二の顔を見ると、早速、目を曇らせる。
話を全て聞き終わった岩崎は、流石に唖然としていた。
てっきり、優二が暴漢を外に連れ出したと思いきや、そのまま優二は帰らなかったのだ。

居酒屋への、不始末の詫びや支払いは、全て岩崎と吉本がした。
彼等は、何度、優二に電話をしたことか分からない。
優二の携帯電話は、ドサクサに紛れて、タクシーの中にでも忘れてしまったのか、見つからず仕
舞である。
岩崎は、優二の話で、事の全容がやっと掴めたようだ。

(さて、この男の処分だが・・・)
岩崎は、慎重に考えざるを得ない。
小牧に続いて、優二までがこの不始末では、監督責任は免れぬであろう。
『君は、あの時、暴漢を連れ出したのだ、そして暴れる彼女を警察へと連れて行った。そこで君は
、警察に事情徴収を夜まで受けた、まあ、そういうことだな・・・?』

『はあっ?』
優二は、不思議そうな顔をしたが、やっと岩崎の真意が分かった。
が、ここは社会人としての、けじめを取らないとならない。
優二は、自ら懲戒解雇を願い出た。
岩崎は、それを聞いて、両腕を前に組んだまま、沈黙を守り始めたのである。。。


最終話に続く・・・
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