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マニラKTV悲話 その㊵ 脅迫 [小説]

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『君は、一体何が言いたいんだね・・・?』
『いやあ、話は全部福田から聞いていますよ、お子さんが出来たから、そのことで、福田と一緒
に、このフィリピンに来られたんでしょう?』
『・・・・・・・』
急に、黙りこんで仕舞う岩崎・・・

『僕には、妻子がいます、こんなことで、今の仕事と家族を、棒に振ることは出来ません・・・、そ
こで支社長にお願いなんです、どうにかして、僕を、穏便に日本へ戻して下さいませんか?』
小牧は、段々と開き直ってきたようだ。
岩崎は、ぐっと詰まってしまった。
弱みは、完全に握られている。

こんなことが、小牧のお陰で、仕事上の敵である、副支社長の吉本にでも知られたら大変だ。
『分かった、善処してみるよ・・・』
岩崎は、やっとそれだけを言うと、小牧を帰した。
という訳で、岩崎は優二が帰るのを、次の日まで待っていたのである。
『さあ、どうなんだね・・・?』

『も、申し訳ありません・・・』
優二には、言葉もなかった。
思わず口走ったとは言え、やはり、小牧なんぞに話をしたのが、間違いであったと気付いたのだ。
(穴が有ったら入りたい・・・)
優二は、恥じた。

深々と頭を下げながら、彼は岩崎にこう言う。
『本当に申し訳ありません、僕は責任を取って、会社を辞めさせて頂きます・・・』
『な、何だと・・・』
これには、流石の岩崎も驚いた。
『君が辞めても、仕方が無いだろう・・・』

岩崎は、益々不機嫌になってそう言った。
『では、どうすれば許して頂けますか?』
優二は、小さな声でそう聞いた。
『君が、小牧を説得し給え、彼を日本に帰すということは、私の監督不行き届きになる、何とか
それを回避するんだ、そうしたら、今回のことは不問にしてやるよ・・・』

『は、はい、早速明日小牧と話をします・・・』
優二は、もう、そう言うしか無い。
それだけを言うと、逃げるようにして、自分の部屋に戻った優二である。
(さて、どうしよう・・・)
青い顔をしながら、帰ってきた優二を気遣うジュリアを尻目に、彼は頭を抱えるしか無い。

(こういう問題を、ジュリアに打ち明けて良いものか・・・)
彼は、迷いに迷ったが、その夜は、取り敢えず打ち明けるのだけは止めにした。
さて、翌日・・・
優二は、ジュリアをコンドに置いたまま、定刻に会社に出勤した。
そして、小牧の傍に行き、昼休みに二人で話をしたい旨を、伝えた彼である。

『どうやら、支社長に言われて来たようだな・・・』
流石に、小牧は察しが良い。
昼飯を、会社の近くにある、『スモール東京』の一角のレストランで取りながら、小牧が言う。
『それで、本当にこのままでいいのか?』
『何がだよ?』

『日本に帰ることだよ、帰ったらその娘はどうするんだ?、生まれてくる子は・・・?』
『お前、俺に責任を取れというのか・・・?』
『それは、当たり前だろう、俺もあの娘は知っているが、凄く真面目そうな娘だった、その彼女が
お前の子供を妊娠したんだ、お前が責任を取らなくてどうするんだ?』
『俺の子供だという、証拠は何処にも無いさ・・・、兎に角、俺は、こんな揉め事は御免なんだよ。』


続く・・・
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