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マニラKTV悲話 その㊶ 告知・・・ [小説]

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このままでは、埒が明かない。
小牧は、黒を白と言い張るばかりだ。
優二は、一旦引き下がることにした。
(やはり、これは帰ってジュリアに相談してみようかな・・・)
再びそう思ってみたが、いや、それはまずいであろう。

何せ、小牧が孕ませたアイリーンが働いているその店は、優二が、ジュリアに隠れてデートをした
女の娘も、働いている店なのだ。
万が一、彼女が一緒に行きたいと言ったなら、又々、修羅場が引き起こるかもしれない。
(ふ~、危ない危ない・・・)
優二は、折角手に入れた幸せを、小牧なんぞのことで、失いたくは無かった。

そう思い直し、ジュリアには、今夜は会社の用事で遅くなるとだけ電話で伝え、食事は自分一人で
済ますように、彼女に告げた。
ジュリアは、優二が遅くなるということに、露骨に不快そうな口調で文句を言ったが、これは当然で
有ったかも知れない。
例えて言うならば、新婚二日目の夜に、旦那が残業で遅くなるということだ。

優二は、電話でジュリアを宥めるのに、一苦労をして仕舞った。
(ともあれ、早く行って早く帰ろう・・・)
彼は、そう思うしか無い。
彼は、定時で会社を上がると、夕食を適当に済ませ、アイリーンの店に行った。
店に着き、ママさんにアイリーンを指名すると、ママさんは不思議な顔をする。

『御免、わけが有るんだ・・・』
優二は、そう言い訳をするしか無い。
遠くには、優二が以前デートをした、女の娘の顔も見える。
ママさんは、何故優二がその娘ではなく、アイリーンを指名したのか、理解が出来なかったのだ。
それはさて置き、アイリーンがやって来て、優二の隣りに座った。

『お久しぶりね・・・』
アイリーンは、笑顔で優二にそう言う。
『うん、実は君に話があるんだ。』
『ああ、分かった、小牧さんの事でしょう。』
アイリーンは、さすがに察しが良い。

優二が、自分のオキニを指名せずに、アイリーンを指名したのである。
小牧の会社の同僚としてやって来たのなら、用件は察しがつくというものだ。
『率直に言おう、君は小牧の子供を本当に妊娠しているのかい?』
『ええ、本当よ、でも何故?、あの人は、私がそれを告げたら来なくなった。』
『う、うん、それなんだが・・・』

優二は、流石にそれからが言いにくい。
しかし、ここは正直に言うのが、彼女の為である。
優二は、思い切って、小牧には、日本に妻子が有る旨を告げて仕舞った。
アイリーンは、流石にショックを隠せない。
見る見るうちに、頬に涙が伝わって行く・・・

『すまん、小牧に代わって詫びを言う・・・』
優二は、頭を下げた。
『別に、貴方が悪い訳ではないわ・・・、悪いのは全て彼よ・・・、私は、あの人のことを本気で愛し
ていたのに・・・』
優二は、聞いていて、胸が苦しくなった。

愛する気持ちは、優二とて、間近に経験しただけに、よく分かる。
アイリーンの気持ちが、心に痛いほど、手に取るように分かるのだ。
優二は、暫く沈黙をして、彼女を見守るしか無い。
やがて、アイリーンは、少し気持ちが落ち着いたのか、ぼそぼそと優二にこう言った。
『小牧さんに伝えて頂戴、二人だけで話がしたいと・・・』


続く・・・
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