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モツ鍋屋の親子がいくフィリピン紀行 1 [小説]

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定次が、病院で生死を彷徨っている丁度その頃、息子の徳次は、パサイにあるジュネムトラベルで、
オーナーのFさんと話し込んでいた。
父親の定次が、ここで行方不明になっている話をすると、彼女は心から心配そうな声でこう言う。
『あらまあ、それは困ったわねえ、それでお父さんの手掛かりは全然ないの?』
『ええ、それが全く無いんですよ、実はそれで困ってしまって・・・』

と、今度はトニーの話をしたが、これには鼻で笑われてしまった。
『あらら、お馬鹿さんねえ、今時、そんな古典的な詐欺に引っ掛かるなんて・・・』
徳次は、この言葉を聞くと、流石にムッと来た。
しかし、Fさんとは、元々こういう人なのだ。
知らない人から見れば、ぶっきらぼうで口が悪いと思われるが、根は以前書いたように温かい。

正義感も人一倍強く、曲がったことは大嫌いな性格だが、その面倒見の良さから、在比の日本人か
らは、『マニラの母』と呼ばれて慕われている。
さて、そのマニラの母は、徳次にこう言った。
『トニーって言うのは、ここでは有名な小遣い稼ぎの詐欺師なのよ、でもまあ、それだけで済んだから
良かったわね。』

彼女にそう言われた徳次だが、トニーの事をまだ信じていたので、未だに半信半疑で居た。
その様子を見たFさんは、1枚の写真を見せたが、そこにはあのトニーが写っているではないか・・・
これをみた徳次は、流石にぐうの音も出なかった。
どうやら、Fさんの言うことには、間違いが無さそうである。
落ち込む徳次に、Fさんは重ねてこう言った。

『トニーを探しだそうとしても無駄だわよ、彼はホトボリが覚めるまでは、稼ぎ場所を変えるから・・・』
これで、決定であろう。
お金はもう、返って来そうにない。
Fさんは、がっかりしている徳次に、こうアドバイスをした。
『あなたのお父さんだけどねえ、行方は、追い掛けていった女が知ってるんじゃないの?』

これは、もっともであろう。
何故、もっと早くこれに、気が付かなかったのであろうか?
うっかりしていた徳次だが、では、どうやってその女を調べれば良いのか?
それは、至極簡単である。
定次が通っていた中洲の店を、突き止めれば良いことだ。

そこで聞き出せば、定次が追い掛けていった、女の住所を教えて貰えるかもしれない。
予め、そういうことを調べて置けば、今の苦労は必要なかったであろう。
しかし、今の徳次がそれを行うには、一度日本に帰国しなくてはならないのである。
徳次が頭を抱えて悩んでいると、Fさんがこう尋ねた。
『誰かさあ、日本でお願い出来る人はいないの?』

『あ、そうだ!』
真造が居るではないか、この作業は、彼こそが適任であろう。
その場で、Fさんに電話を借りた徳次は、早速、日本の真造に電話をした。
直ぐに了承して呉れた真造であったが、結果が分かり次第、直ぐに連絡をすると言ってくれたので、
徳次は、連絡先にここの電話番号を伝えたのである。

Fさんが、横からそうしなさいと言ってくれたのだ。
結果が分かるまでに、少なくとも、明日の朝までは掛かるであろう。
何しろ、店は夜に開くのだから・・・
徳次は、Fさんの紹介で、近所の安宿を紹介して貰った。
そこならば、ジュネムに近いので、安心である。

何しろ、ヘリテージに泊まるよりも、数分の1の値段で済むのだ。
それにお金だが、Fさんに、持ち歩きは勿論、宿に預けるのも不可だと言われたので、必要額以外
は、全てここの金庫に預けることにした。
何から何まで、Fさんの配慮は行き届いている。
徳次はFさんに感謝をして、ヘリテージを引き払うと、その日は、その安宿に泊まることにした。

さて、翌日の朝のことである。。
ジュネム・トラベルに行くと、Fさんが、にこやかな顔で待ってくれていた。
『さっきねえ、真造さんっていう人から電話があったわよ。 お父さんが通っていたお店の女の名前と
住所が分かったそうよ、え~と、ニダって言うのが女の名前で、 う~んと、住所はブラカンの◎◎◎
て所だってさ、じゃあ、早速ここに行ってみる?』


続く・・・


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徳次の無事も、祈りましょう!(爆)
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旅の老人

お早うございます。

やっと息子の登場で父親探しの具体的行動が確認できます・・・(笑
私も昔聞いたアドレスだけでタレントの自宅を訪ねたことが何度もありましたが、本人の名前だけでは見つからないケースも多々ありました。
ベテランになりますと近所でも評判になり親の名前を出さずに見つけられました。今は携帯がありますから迅速な行動も出来ますね・・・(ぷ

本日からタイトルも一新されましたね・・・(微笑
by 旅の老人 (2012-08-24 07:46) 

名無しの龍

ここからジェットコースターの様な展開でハラハラ、ドキドキ?!
by 名無しの龍 (2012-08-24 08:09) 

moimoi

鴨野さん

おはよう御座います。

移住して間もない頃、日本の友人がこちらに来たという話を、人伝に聞きました。

カビテのGMAという地名でしたが、会いたくて矢も盾もたまらず、バスに乗り出掛

けました。

勿論、詳しい住所等は知りません。

で、GMAはとてつもなく広いのですわ。

今から考えれば、無謀の一言でしたが、その辺に居たトライシケルの兄ちゃんに

最近、ここに来た日本人知らないかと聞いただけで、一発で探し当てられました。

飛んでもない国です。

チスミスも、意外な所で役に立つのですね!(爆)
by moimoi (2012-08-24 08:12) 

moimoi

名無しの龍ちゃん

『真造がゆく』の番外編で始めたモツ鍋屋の話ですが、そろそろ佳境を迎えた

ようです。

もしかして、一気に収束かもですね!
by moimoi (2012-08-24 08:14) 

萬久

定次を刺した犯人もわからないまま話はマニラに戻るわけですか?
うーん、消化不良です。
by 萬久 (2012-08-24 09:01) 

Leo

今後の展開,ストーリーの組み立てに迷いがあるようですねぇ!(笑
by Leo (2012-08-24 09:04) 

moimoi

お萬どの

>うーん、消化不良です。

いやあ、犯人はもう100%決定でしょう。(笑)
by moimoi (2012-08-24 09:16) 

moimoi

Leoさん

いいえ、全く迷ってはいませんぞ!(笑)

全部、成り行きですからあ~!(爆)
by moimoi (2012-08-24 09:17) 

カカロット

息子の徳次登場、父親とどう再開するか楽しみですね。

師匠の頭の中には構想が出来ているんでしょうね。

父親の定次が刺された犯人はあの男ですよね。

そちらの方もいつかでるのかな、

長編小説頑張っつて、師匠(爆)
by カカロット (2012-08-24 09:59) 

moimoi

カカ様

>頭の中には構想が出来ているんでしょうね。

真っ白な白紙です。(笑)

定次が刺されるのも知りませんでしたし、ましてや内山さんが看護師だった

などとは、初めて知りました。(爆)
by moimoi (2012-08-24 10:05) 

提督

物語の結末へお急ぎのご様子ですが…
Fさんが徳次に同行し、大立ち回りしてくれれば、一気に解決しますな!
内山さんもFさんの親戚だったりしてw
「ニダもアイラも、やらせなきゃ駄目よねッ!」モツ鍋物語完結時の〆言葉でございます(笑
by 提督 (2012-08-24 11:55) 

moimoi

提督はん

>物語の結末へお急ぎのご様子ですが…

え~、別段急いでは居りもはん。(笑)

次に書くことがごまんとあります。

その名も、『オスカルのダバオ紀行』のタイトルで・・・(爆)
by moimoi (2012-08-24 12:18) 

shiNji

はてさて、ブラカンとバギオの親子をいかに結びつけるのか筆者の構想・妄想・暴走に期待ですは(笑。
by shiNji (2012-08-24 12:55) 

moimoi

神示さん

構想は私でいいのですが、妄想はお馬さんに、暴走はhideさんに、抗争は

鉢巻おやぢにオニガイしときます!(爆)
by moimoi (2012-08-24 15:22) 

ヤマハバイク

徳治も早速フィリピン人の詐欺師の洗礼を受けて、心の広い叔母さんに助けられて、父親探しの旅が始まりますね。
定次との再会までには紆余曲折がありそうですね。
by ヤマハバイク (2012-08-24 19:42) 

洗濯屋

>> 真っ白な白紙です。(笑)

では、「私が登場して事業で成功し
マラミ・マガンダ・ババエを集めてハーレムを作ってフィリピンで幸せに暮らした」と言う夢を叶えてください

せめて小説だけでも・・・((T_T))
_
by 洗濯屋 (2012-08-25 02:49) 

moimoi

ヤマハさん

作者が気紛れなので、紆余曲折になったり、意外と簡単に事が運んだりと、

もう大変ですわ。(笑)

お読み頂いて、有難う御座います。
by moimoi (2012-08-25 05:24) 

moimoi

洗濯屋さん

>ハーレムを作ってフィリピンで幸せに暮らした・・

こういうことが書ける洗濯屋さんは、きっとタフなのでしょうねえ・・・

私には、先ず下半身強化の特訓から始めねばなりませんわ!(爆沈)
by moimoi (2012-08-25 05:28) 

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