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モツ鍋屋の息子がゆくフィリピン紀行 2 [小説]

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徳次は、ある意味、フィリピンを憎んでいたかも知れない。
元々、父親と母親が別れた原因は、父の定次がフィリピンパブに入り浸っていたからである。
一時期は収まってはいたものの、再び甦ったのか、今度は黙ってフィリピンへ行ってしまった。
しかしまだ,、徳次は、定次が店を担保にして、銀行から金を借りた事実までは知らないでいる。
もし知ったら、今度こそ、もう父親を放っておいたかもしれない。

幾ら自分の店とはいえ、徳次には黙って、金を借りていたとは酷すぎよう。
定次は、そのことだけは徳次に隠して、旅に出たのであった。
さて、徳次はフィリピンに到着したものの、何という当てがあるわけでもない。
只、日本大使館には行ってみたかった。
そこで何か、情報が得られればと思ったのである。

徳次は、空港で両替をした後、タクシーを拾い、ガイドブックにあったヘリテイジホテルへ向かった。
予算的には少々高めだが、大使館からは近いと書いてあったので、飛行機の中で決めたのだ。
タクシーに乗り、行先を告げると、運転手はメーターを使わずに、何か料金表なものを差し出した。
英語で書いてあるので、徳次には何と書いてあるのかが分からない。
仕方がないので、ハウマッチとだけ言うと、1500だという答えだけが返ってきた。

(高いな)、とは思ったが、文句が言えるほど言葉が分からないので、素直に出すしか無い。
何せ、中学生の頃から真造にひっついて、不良仲間に入った徳次である。
英語の勉強などは、全くと言う程やっていないのが自慢であったのだ。
その話はさて置き、ヘリテイジホテルに着いた時は、既に夜の8時を廻っていたので、徳次は、その
夜はホテルの中のレストランで食事を取ることにして、大使館には明日の朝行くことに決めた。

彼にとっては、初めてのフィリピンで、初めてのホテル、初めての食事である。
徳次の海外旅行経験といえば、2年前の韓国旅行しか無い。
商店街の慰安旅行で、定次の代わりに参加した旅行である。
あの時は、ツアーガイドもちゃんといたし、顔見知りばかりの団体旅行でもあったので安心だった。
それに比べて、今回のフィリピン行きの不便さは、どうしたものであろう。

食事一つをとってみても、徳次には不自由であった。
メニューを見たのだが、英語表記で何が書いてあるかが分からない。
兎に角、ホテルの部屋の予約すら入れていなかった徳次だ。
先程は、フロントであたふたしていると、日本人のマネージャーが出てきてくれたので助かったが、こ
れで部屋が空いていなければ、路頭に迷いかねない状況だったのである。

徳次は、自ら望んでここに来たわけではない。
しかし、これからは、何もかも自分で決め、自分でやらないといけないのだ。
徳次が持っているガイドブックに拠ると、ここには、日系旅行代理店がいくつかあるという。
(大使館行った後は、そこに行ってみるのも一つの手かもしれない。)
徳次は、漠然とそう考えていた。

さて翌朝のこと・・・
徳次は朝食を済ませ、大使館へ向かおうとホテルを出た。
ガイドブックの地図を見ると、大使館へは歩いても行けそうな距離だ。
昨日のような、ボッタクリタクシーに乗るのは、もう真っ平だと思っている徳次である。
タクシーには乗らず、歩いて行く事にした。

しかし、これは決して懸命な選択ではないであろう。
安全こそは、お金にも替えられないとことを、経験の無さから、まだ知らなかった徳次である。
ホテルを出ると、大使館までは、エドサ通りを横断して渡らないといけない。
これが、実に厄介なのだ。
近くには、横断歩道も歩道橋もない。

車の行き来の絶えないこの場所での横断は、かなりの慣れを要するのだが、徳次には、そんなテク
ニックなど、まだあろうはずが無かった。
何せ、悪名高い、マニラの無謀運転多発地帯、エドサ通りなのである。
『ひゃ~、ひゃ~』
と徳次は叫び声を上げ、何度も肝を冷やしながら、横断せざるを得なかった。

こんなに恐ろしい道路の横断など、徳次にはこれまでに経験がないであろう。
しかし、現地の人は、平気ですいすいと横断していくのである。
徳次には、それが不思議で堪らなかった。
しかも、相当量の排気ガス・・・
徳次が、目眩を起こしそうになったのも、無理からぬ事であった。

そこまで苦労をして行った大使館であったが、定次と言う名での事件や事故の報告は無いという。
がっかりして、今度こそタクシーでホテルに帰ろうとした時、ある男に日本語で声を掛けられた。
『ああ、私あなたのホテルのガードマンね、名前はトニーよ、あなた元気ですか?』
『ん、?』
徳次は、その男に振り向いて、耳を傾けた。


げげげ、トニー登場じゃー!(爆)


押して呉れれば、続きを書きませう!(爆)
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旅の老人

お早うございます。

初めての比国への旅行にしては両替もタクシーもホテルのチェックインも事もなく進む徳次は旅慣れてるように思えます。
自分の時は夜中のノース便で、全て出迎えの日本ベテランのお姉さんのエスコートのままにリサールの自宅に直行しました。今振り返ってみれば『無謀』の1語に尽きます・・・(苦笑
両替や言葉のハンディすらも考えず、初めての海外旅行が比国の一人旅でした・・・(大汗
徳次さんは随分お若いから『痛い親父』と違って現代的若者なのかな?

ロハスの大通りの車の合間を潜り抜ける横断技術は確かに脅威でした。
それも老若男女皆さん平気な顔で渡りきるのですから・・・(大汗
25年前は信号機のある横断歩道は皆無でした。

日本語の通じる男トニーに行き会って『地獄に仏』の心境かな?(謎
by 旅の老人 (2012-07-18 07:48) 

moimoi

鴨野さん

>徳次は旅慣れてるように思えます。

いやあ、単なる紙面の都合で端折っただけですばい。(笑)

でもまあ、両替くらいなら言葉は要りませんね。

只、タクシーは自分の経験から言っても、慣れないと苦情までは言えない

でしょう。

言いなりに払うしか、手立ては無さそうです。

こういう時には、ガイドが欲しいと願うのは当然ですが、相手が詐欺師だっ

たらね~(苦笑)

徳次の苦労は、まだまだ続きそうですね!
by moimoi (2012-07-18 08:20) 

Leo

トニーは今でも元気に鴨漁りをしています。(笑
by Leo (2012-07-18 09:11) 

萬久

>げげげ、トニー登場じゃー!

この頃からトニーは活躍ですか?
困っている時に親切そうに声を掛けてきた人に思わず助けを求めたんでしょうね。
まずここで騙し取られるわけですな(笑

で、PPでニダの情報はある程度つかんできたのでしょうか?
全く情報なしで渡比していたのならお馬鹿さんの極致ですが(爆
by 萬久 (2012-07-18 09:17) 

moimoi

Leoさん

>トニーは今でも元気に鴨漁りをしています。

はい、つい最近もロビンソンで見掛けましたわ。(笑)

声を掛けて来たので、エエ加減顔を覚えろと一喝してやりました!(爆)
by moimoi (2012-07-18 09:25) 

hide.pp@暴走

>げげげ、トニー登場じゃー!

ロビンソンで営業開始するまでは、
マジメに炎天下で仕事してたんですね。(偽笑
by hide.pp@暴走 (2012-07-18 09:30) 

moimoi

おーまん殿

>PPでニダの情報はある程度つかんできたのでしょうか?

げげ、2日連続の質問・・・(涙)

これで、このネタが使えなくなりました。(号泣)

>この頃からトニーは活躍ですか?

私を騙したトニーとは違いますよ。

有名な、詐欺師のトニーの方です。

私が一番最初に見たのは、1995年のことでした。

その頃は、ハリソンプラザに巣食っていましたね。

最近ではロビンソン、メガモールやマカティにも出没していたという、目撃

情報があります。

見掛けたら、『一昨日来やがれ』と言ってやって下さい!(爆)
by moimoi (2012-07-18 09:32) 

moimoi

暴走はん

詐欺生活も、もう長いですからねえ・・・(苦笑)

歳を取ってきたのでしょう。

エアコンは、必需のようですな!(爆)
by moimoi (2012-07-18 09:49) 

名無しの龍

ヘリテージよりさらに遠くから、大使館まで歩きました。
とって遠かった><
by 名無しの龍 (2012-07-18 09:50) 

moimoi

名無しの龍ちゃん

とっても遠かった><

で、トニーには出会いましたか?(爆)
by moimoi (2012-07-18 10:02) 

タバちん

ああ良かった、偶然、ホテルのガードマンに会うなんて、ラッキーですよね。
しかも日本語が出来る。
不安だし、持ち金も預かってもらえないかな?
え、ホテルの金庫にいれといてあげるって。
なんて親切なんだ。
パスポートもお願いしてイイですか?

よかった、これで、もう安心だ。
by タバちん (2012-07-18 10:09) 

Umetta

よくある手口にペソじゃない ドルだ!ってのもありますよね!
不快タクシー何度も経験しましたが下記のような件が1件ありました、
空港第2から駐車してるタクシー(正規の乗り場でない)に乗りエルミタへ進行しますとメーター使わず最後に米ドル表示の料金表を出して 30ドルほど請求されました
交際中ババエが交渉しましたが ラチあかないので不本意ながら払いました
by Umetta (2012-07-18 11:19) 

きた

最初に来た時
思い出します
ボコボから
ロビンソに渡るのも
びびってましたから

by きた (2012-07-18 12:48) 

moimoi

束珍さん

こんな幸運なんて、願っても中々あることではありませんね。(笑)

これで、書いている私も安心です。(爆)

さーて、定次の行方でも探しにいこうっと!(大爆)
by moimoi (2012-07-18 13:12) 

moimoi

梅田さん

ああ、そういう手口も聞いたことがありますね。

そういうドライバーには、お仕置きをしてあげなけらばなりませんな。(笑)

本当にたちの悪いドライバーが、空港周りには多過ぎます。
by moimoi (2012-07-18 13:19) 

moimoi

北海道さん

夜歩くのは、近距離でも怖いものですね。

私は、今でも用心しながら歩いています。

あたりに目を配りながら歩いていると、悪い連中もそれを悟って簡単には

襲ってはきませんよ。
by moimoi (2012-07-18 13:24) 

洗濯屋

昨日、気温が40度を超えました。・・・┐('~`;)┌

湿度のある日本での40度は たまりません
早くフィリピンへ帰りたいっす・・・(T_T)

おおっカイビガンのトニー登場ですね♪・・・(笑)
ロビンソンに顔を出さなくなったのは前々回の渡比で
自分が毎日の様にロビンソンでぶらぶらしていたせいでしょうか?・・(笑)

自分と出くわすと、いや~な顔をしていました。
トニーサビニャ「お前早く帰れ」と
サビコ「バキッと、アヤウモ、カイビガンコ、アコ、マサキットプソコ」と毎日、出会う度に、イジイジと意地悪会話を受け取る やっていましたので・・・(^^ゞ

by 洗濯屋 (2012-07-18 14:02) 

カカロット

トニーには会った事ないですね、ババエ以外にはだまされたことないですけど。
世の中に、必殺仕事人みたいな人がいないもんかな、私を騙したババエどもに一撃を・・・・・(爆)
by カカロット (2012-07-18 14:10) 

moimoi

洗濯屋さん

古い友だち参上ですな。(笑)

私が最後に見たのは、去年の暮れぐらいだったと思います。

あれから見ませんが、生きているのでしょうかねえ?

懲りずにやっているとは思いますが、あの男もとうとうあれが職業に

なってしまったような気がします。

哀れですなあ・・・
by moimoi (2012-07-18 16:20) 

moimoi

カカ様

暑い中、ご苦労さまです。

カカ様は、ババエだけが天敵ですかな。(笑)

ババエへの一撃は、息子にして貰いましょう!(爆)
by moimoi (2012-07-18 16:21) 

shiNji

ヘリテージの真向かいには江戸差コンプレックスがあるんだけどなぁ、今晩トニーさんがエドコンに案内してくれましぇんかにゃ?
by shiNji (2012-07-18 21:05) 

moimoi

神示さん

>ヘリテージの真向かいには江戸差コンプレックスがある

いやあ、神示さんとは目的が違いますからなあ・・・(爆)
by moimoi (2012-07-19 04:05) 

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