竹盗り物語 [フィリピン童話]
昔々、呂宋の都の郊外に、他人の山に入っては竹を盗み、密売を繰り返す、悪いジジイが居ました。
性格も悪く狡猾だったので、近所の人は皆敬遠して、そのジジイには近付こうとはしません。
ジジイには、彼のアサワであるババアも居ます。
ブルゴス村出身の、今ではもう、すっかりと乳の垂れたババアでした。
このババアも、性格ではジジイに負けては居ません。
恐らく、強欲にかけては、その当時、都(みやこ)では一番だったことでしょう。
しかし、この似たもの同士の老夫婦には、子供は居ませんでした。
なので、悪事で稼いだお金は、その日中に使ってしまいます。
元々、貯蓄の習慣の無い国ですので、老夫婦に限らずこうなりますが・・・
それはさて置き、ジジイはババアに内緒でKTVに通っていました。
勿論、口説くために相違ありません。
色気のすっかり無くなったババアには、今ではすっかり興味のないジジイです。
似たもの夫婦と言っても、仲が良いとは限りませんわなあ・・・
ババアも、ジジイには黙って、ホストクラブに通っていました。
お互いに、やれ茶飲み会に出掛けるだの、将棋を指しに行くなどと、嘘を付きながら出掛けます。
これらの出費は、それぞれが収入を誤魔化したお金から賄われました。
しかし、ジジイは若いババエを、ババアは若いララキをゲットしなければなりません。
かなりの収入がないと、遊びにも行けない現状でしたので、悪事は毎日欠かせませんでした。
ある日のことです。
ジジイがいつもように、他人の山で竹を切り盗んでいると、一本の竹から異様な声が聞こえて来ました。
耳を澄ますと、微かに、赤ん坊の泣き声のような声が聞こえます。
ジジイは不審に思い、その竹だけ慎重に根本から切り倒しました。
するとどうでしょう。
2番目の節目から、女の赤ちゃんが現れたでは有りませんか・・・
『ほう、これはこれは・・・』
その赤ちゃんは、ジジイも目を瞠るくらい、黄金色に輝いていました。
ジジイは喜び、早速その赤ん坊を家に連れて帰ります。
ババアも、これには喜びました。
天からの授けとばかりに、その娘に『プリンセス・バンブー』と名付け、二人して可愛がったのです。
その日から、娘を育てるために、二人はより一層に悪事に励みました。
しかし二人共、KTVとホストクラブ通いは止めません。
但し、子供の面倒を見なければならないので、お互い代わりばんこでしか行けなくなりました。
そんな老夫婦をよそに、プリンセスはすくすくと大きくなり、たったの3ヶ月で成人の女性になりました。
顔とスタイルは、抜群です。
しかし、性格が宜しく有りません。
何せ、あの強欲の老夫婦に育てられた娘ですよ。
良いわけがないのです。
最初こそ、ジジイとババアは、このプリンセスを可愛がりましたが、最近は疎ましくなっていました。
何かにかこつけて、ジジイとババアをこき使うプリンセスです。
しかも、超贅沢で我儘でした。
ジジイとババアの稼ぎが少しでも悪いと、悪たれをついて罵ります。
お陰で、最近では、お互い夜の街へは、繰り出せなくなりました。
(こんなことになるくらいなら、拾うてくるのでは無かったわ・・・)
ジジイは後悔しましたが、もう後の祭りです。
大きくなって凶暴化しているプリンセスには、ジジイもババアも逆らえません。
そういう時のことです。
プリンセスに、縁談の話が舞い込みました。
元々、顔とスタイルは良いのです。
『是非とも嫁にほしい』という申し込みが、後を絶ちません。
ジジイとババアは、これはチャンスとばかりに喜びました。
プリンセスがお嫁にさえ行ってくれれば、二人は、この悪夢のような生活から抜けだせます。
そうなれば、再びKTV及びホストクラブ通いも、再開出来るでことしょう。
しかし、プリンセスは、中々首を縦に振りません。
しかも、あまりしつこく迫ると、プリンセスは、ジジイとババアを拷問に掛けます。
老夫婦は、もう毎日を泣いて暮らすしか有りませんでした。
丁度その頃、都のお姫様が、お忍びでジジイとババアの住んでいる村を訪れました。
そして、あろうことか、ジジイとババアの家で、休息することになったのです。
まあ、トイレにでも行きたくなったのでしょう。
お姫様は、厠(かわや)に入りました。
それを見ていたのは、プリンセスです。
彼女は、いきなり発情しました。
無言で厠に入ると、お姫様を誘拐(さらっ)て、自分の部屋に監禁しました。
そうなんです。
彼女は、実はトンボイだったのです。
道理で、男に興味を示さないはずでした。
それはともかく、お姫様の家来達は、この事態には驚きました。
プリンセスの部屋を大勢で取り囲みましたが、何分にも姫が人質になっているので手が出せません。
業を煮やした家来達は、『姫を渡さないとこのジジイとババアを殺すぞ!』と脅しました。
が、プリンセスは、一切お構いなしです。
悠々と、お姫様の身体をむさぼっていました。
可哀想に、ジジイとババアは、家来達に殺されて仕舞いましたが、それでもプリンセスは平気です。
お姫様も、プリンセスには満更でも無さそうでした。
監禁3日後、姫の父である王様は決断しました。
姫の要望も有り、プリンセス・バンブーを正式に姫の夫として、城に迎え入れることにしたのです。
二人はそこで、死ぬまで仲良く一緒に暮らしましたとさ!
ああ、今回も何の教訓ににもならない物語でしたねえ・・・(爆)